人生で一度も嫌いな人がいたことがない、という人は珍しいのではないでしょうか。学校やバイト先、職場などに、会うだけで億劫になるような嫌いな人、というのは一人くらいいるものです。
関わらないで済む相手であればいいですが、どうしても仕事上などで付き合いが避けられない場合、できるだけストレスなく付き合いたいですよね。
では、嫌いな人へのストレスを軽減する方法はあるのでしょうか。
目次
- まとめ
そもそも人を嫌いになる、というのはどういう仕組みなのでしょうか。
心理学の世界では、自分の中で抑え込んでいる気持ちや、自分自身の嫌いな一面を相手に見たときに、人を嫌いになると言われています。
例えば、子供のころに「自分勝手な行動はダメ!」と叱られ、そこから周りにすごく気を遣ったり、配慮したりするようになったとします。そうすると、「自分勝手にしたい」という気持ちは、自身の嫌いな一面として自分の中に抑え込まれることになります。にもかかわらず、自分勝手に生きている人を見ると、「私はそれを我慢しているのに、あの人は自分勝手にやっていてムカつく!」というように、相手のことが嫌いになるというわけです。
同属嫌悪とはよく言いますが、自分自身の嫌いな一面を見て相手のことを嫌いになるからといって、その人と自分が似ている、というわけではありません。誰しも大人になるほど、自分自身の欲望のままに生きるのではなく、多少は自分の気持ちを抑え込んで、社会の中でうまくやっていくほうが賢明だと知るようになります。嫌いな人を見て、「本当は私もあんなふうになりたい」と思う必要はありませんし、抑え込んだ自分の嫌いな一面を思い出して自己嫌悪に陥る必要もありません。
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では嫌いな人が身近にいてストレスがたまる場合、どのように対処していくのがいいのでしょうか。
◇嫌いな原因をはっきりさせる
まずは、嫌いな原因をはっきりさせてみましょう。「理由は分からないが嫌い」「なんとなく関わりたくない」という気持ちで避けていると、最初は相手の一部を嫌いだっただけなのに根拠もなくその人のすべてを嫌いになってしまったり、嫌いな一面への対処法が分からないままでいたりして、どんどんストレスがたまっていきます。嫌いな原因をはっきりさせてみると、もやもやとした気持ちが晴れ、それだけでスッキリすることがあります。また、嫌いな理由を整理することで、割り切って接することができたり、相手との距離感をうまくとれたりするようになるかもしれません。「自慢をしてくるところが嫌いだから、プライベートな会話ができる場面では距離を取るようにしよう」「この人は焦ると怒りっぽくなるところがあるから、忙しそうなときは気にしないようにしよう」など、嫌いということに変わりはなくても、ストレスを軽減させるのには効果的です。
◇相手のいいところを見てみる
例えどれだけ嫌いであっても、どの面を取っても悪い、いいところが一つもない、という人は存在しないでしょう。相手のいいところを見るようにすると、仮に嫌な部分が見えたとしても、ストレスがたまりにくくなります。「自分勝手な人だけど、挨拶はきちんとしている」「人によって態度を変えたりするけれど、仕事は丁寧」など、相手のいいところを見るようにすると、ストレスが軽減されやすくなります。
◇相手と距離を置く
どうしても嫌いな人であれば、相手と距離を置くのも効果的です。連絡の頻度を減らす、会う回数を減らすなどして、相手と物理的に距離を置いてみましょう。また、嫌いな人と仕事で関わらなければいけないという場合は、「必要以上に関わりたくない」という態度で接していれば、相手も気がついて、不必要に話しかけてこなくなるかもしれません。
◇相手に期待しない
相手に「~であってほしい」「~してほしい」と期待すればするほど、それが裏切られたときに相手を嫌いになりやすくなります。「上司なら信頼できる人であってほしい」「友達なんだから気遣ってほしい」など、相手に期待をすると、相手が違う反応をしたときに「どうしてできないのか」とストレスを感じます。最初から相手に期待しないでおけば、嫌いな人がどうしようとあまり気にならなくなります。
例えば、職場に怒りっぽい人がいて、その人に怒られる度に嫌な思いをしているとします。「怒りっぽい性格が直ってほしい」「今日は怒らないでいてほしい」と思うと、怒られたときには大きなストレスになります。しかし、最初から「この人は怒りっぽい性格だから」「怒られなければラッキー」くらいの気持ちでいれば、決して怒られたときにストレスを感じなくなるわけではなくとも、ストレスを軽減させることはできるでしょう。
◇反面教師にする
人の嫌いなところを見て、反面教師にすることで、自分の成長に役立てることができるかもしれません。人の気持ちを理解しようとしない、人の悪口ばかり言う、人によって態度を変える、など、人に嫌われるような言動をする人を見て、「自分はこうならないようにしよう」と気をつけることができます。
反面教師として見れば、相手のことを感情的にではなく冷静に見ることができて、余計なストレスを抱えることも減ります。
◇違いを受け入れる
嫌いな人を好きになるのは難しいですが、価値観や考え方が違うということに対して、単純に「違い」を受け入れることはできるのではないでしょうか。違いを受け入れるということは、そう簡単ではありませんが、一度できてしまえば人を嫌いになるということも減り、ストレスを感じることが少なくなります。
自分と全く同じ価値観、同じ考え方の人はいません。違うところがあって当たり前ですし、自分と違う価値観を知ることは、自分にとって新しい発見になるかもしれません。また、自分の価値観を他人に押し付けてしまうことを防ぎます。嫌いな人に価値観を合わせるのではなく、自分とは違う価値観をただ受け入れることによって、嫌いな一面に対して「この価値観を持っていたら仕方ない」と完全にではなくとも納得できるようになるかもしれません。
◇他人を変えることはできないと知る
人は自分で変わろうと思わない限り、他人が変えることはできません。「もうちょっと人の気持ちを考えて発言してほしい」「もう少し努力したらすごく成長できるのに」と思い、それを本人に伝えたとしても、本人が変えようと思わない限りは何も変わりません。たまたま気持ちが伝わって、本人が「変わろう」と思えば変わることもありますが、詳細なところまでこちらから変えようとすることはできません。
どうして変わらないのか、何度も改善を求めているのに聞かないのか、ということでストレスを抱えている場合は、他人を変えようとするのを諦めることで、余計なストレスを感じずに済むようになるでしょう。
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◇嫌いという感情は自然なことだと知る
嫌いな人がいる、あの人といるとイライラする、と気がついたとき、「こんなことでイライラして自分は器が小さいのかな」と気にする人がいます。しかし、「嫌い」という感情を持つことはとても自然なことです。誰にでも嫌いな人や相性が悪い人は存在します。
ただし、その「嫌い」という感情によって大きなストレスを抱えていたり、いつもイライラしたりしていると、精神衛生的にいいことはありません。そうなった場合には、嫌いな感情と向き合ったり、嫌いな人への対処法を見につけたりするのがいいでしょう。
◇カウンセリングの活用方法
嫌いな人が多い、イライラすることが多い、そんな状況をなんとか変えたい場合には、カウンセリングを活用するのもおすすめです。カウンセラーに相談することで、具体的にどんな人が嫌いなのか、嫌いだと思う理由、どうやって対処していくのがいいか、ということを整理しながら考えていくことができます。
また、「過去にトラウマに近いものを抱えているために、特定の人が嫌い」というケースも考えられます。その場合は、無理にトラウマを思い出すことはせず、精神療法やケアによってトラウマの解消を目指していく方法があります。
嫌いな人がいるのはとても自然なことですし、無理に好きになる必要もありません。しかし、嫌いな人があまりにも多かったり、嫌いな人によって大きなストレスを受けていたりして、どうにかしたいと思っている場合は、対処法を考えていくのがいいでしょう。
一人で考えてもなかなか対処法が分からない、という場合には、カウンセリングを活用しながら、ストレスを減らす方法を探してみてはいかがでしょうか。