何か目標や達成したいことがあった時、迷いなく「自分ならできる」と言い切ることができたらとてもいいですよね。反対に、自分にはできない、自分には無理だ、と思ってしまうと、そもそもチャレンジすること自体をあきらめてしまったり、せっかくのチャンスを逃してしまうことにもつながってしまいます。志望校に受かりたい、志望している企業に就職したい、企業に入ったらこんなことがしたい、など、人生においてやってみたいことや目標というのは、様々な場面で出てきます。その度に、自分ならできる、と思うか、自分にはできないと思うかで、その後の道は大きく変わるでしょう。
この自分にはできる、という感情は、心理学用語で自己効力感とも言います。では自己効力感とは具体的にどんなものなのでしょうか、また自己効力感を高めるためにはどうしたらいいのでしょうか。
目次
- 自己効力感とは
- GSESとは
- おわりに
自己効力感とは、もともと心理学者のアルバート・バンデューラが提唱した概念の1つで、「社会的認知理論」という論文の中で説明されています。バンデューラは、人々が何か決断を下す時には、自己効力感を通して決断している、としていて、自己効力感の有無がその人の生活や人生に大きな影響を与えている、としています。
自己効力感は、実際に仕事ができる、頭がいい、といった事実は全く関係なく、事実がどうであろうと、本人が「自分は仕事も勉強もできる」「なんでもできる」とさえ思っていれば、自己効力感が高いということになります。根拠のない自信に満ちていている、とも言いますが、根拠のない自信であっても、自信があることはモチベーションにもつながりますし、運や勢いを味方につけて、目標を達成していくことにつながります。そうやって目標を達成すればするほど、やっぱり私はなんでもできる、とさらに自信につながり、ますます自己効力感が高くなっていくのです。
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自己効力感は、3つの尺度からその高さを測定することができます。自己統制的自己効力感、社会的自己効力感、学業的自己効力感、の3つの尺度があり、「General Self-Efficacy Scale=GSES」と呼ばれています。Self-Efficacy(セルフ エフィカシ―)とは自己効力感のことです。この3つの尺度によって、自己効力感がどれくらい高い、もしくは低いか測定することができます。
自己統制的自己効力感は、自分の行動を制御することに関する自己効力感で、失敗から立ち直ったり、初めてのことに対してポジティブに臨むという行動について、自己効力感がどれくらいあるか測ります。社会的自己効力感は、人間関係に関する自己効力感で、良い人間関係を作ることや、相手の気持ちを理解することに対してどれくらい自己効力感があるかを測ります。学術的自己効力感では、決めたスケジュールをきっちり守ることや、新しい概念に対して積極的に取り組むことに対して、どれくらい自己効力感があるかを測ります。
自己肯定感との違い
自分ならできる、と思う気持ちのことを、自己肯定感ではないのか、と思う人もいますよね。とても似ていますが、自己効力感と自己肯定感は少し違います。
自己効力感は、自分に「効力」があると感じるかどうかなので、自分ならできる、と思うかどうかになります。自己肯定感は、自分を「肯定」しているかどうかなので、出来るかどうかは置いておいて、結果がどうなろうと自分なら大丈夫、と受け入れることです。
どちらも高い場合、自分に自信がある、ということにつながります。
自尊心との違い
自尊心とは、自分の存在自体に価値があると思うことです。自らの存在に価値があり、自分に自信がある状態を指します。対して自己効力感は、自分の中の目標や可能性に対して「できる」という自信がある状態を指します。どちらも自分に自信がある状態には変わりありませんが、自分自身に対してか、目標達成に対してか、というところに違いがあります。
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自己効力感を高めることには、下記のようなメリットがあります。
モチベーションが上がる
自己効力感が高いと、新しいことにチャレンジしたり、自分の能力をより向上させたいというモチベーションが高くなりやすくなります。何か目標があった時に、取り組むまでのスピードも早くなりますし、積極的に行動できるようになります。
精神的に強くなる
自己効力感が高いと、一度失敗したとしても、そこで落ち込むだけでなく、次の一手を考えるようになります。自己効力感が低いと、ちょっとしたミスなども気になり、自分には向いていないのではないか、できないのではないか、と落ち込む時間も長くなってしまいますし、最悪諦めてしまうことにもつながります。
良い人間関係が築ける
自己効力感が高いと、人間関係においても周りといい関係を築きやすくなります。少し嫌なことがあってもすぐに立ち直ることができますし、人とコミュニケーションを取る際にも自信を持って相手と接することができます。
バンデューラは自己効力感に関わる要因を4つ提唱しています。後に1つ加わり、自己効力感は5つの要因によって決定するとされています。
自己効力感の要因1.達成経験
1つ目の要因は、何か目標を達成した、という達成経験です。自分で何かをやり遂げた、成功した、という経験が多いほど、次も上手くいくだろうという気持ちになりやすいですよね。
この達成経験は、自己効力感を決める最も需要な要因になります。
自己効力感の要因2.代理経験
代理経験とは、他の人が目標を達成したり成功している経験を、見たり聞いたりする経験のことです。例えば同じ会社の先輩が、自分と同じような目標に対してすでに達成していたとしたら、自分にもできるかもしれない、というポジティブな感情が生まれやすいですよね。
身近な人の代理経験であるほど、影響力も大きくなります。
自己効力感の要因3.言語的説得
言語的説得とは、他人から「あなたなら大丈夫」と励まされるような、言葉による説得のことです。尊敬している人から、「あなたならできる、大丈夫!」と言ってもらえると、とても自信につながりますよね。逆に、「あなたにはちょっと難しいと思う」と言われたら、それまであった自信も揺らいできますよね。
親や上司、先輩、教師からの言葉によって、良くも悪くも影響を受けるので、どんな言葉を受けたかということが重要になってきます。
自己効力感の要因4.生理的情緒的高揚
生理的情緒的高揚とは、その時の気持ちや体調のことを指します。
どんなに自分に自信があったとしても、38度の熱が出て腹痛もあれば、今日はちょっとできないかもしれない、というようにマイナス思考になりやすいですよね。寝不足だったり緊張していたり疲れていたりすると、自己効力感が低くなりやすいです。反対に、体調も万全、気分爽快の日は、なんでもできそうな気がしてきますよね。このような体調やその日の気分なども、自己効力感に影響を与えます。
自己効力感の要因5.想像的体験
最後の要因は、想像的体験です。自分が目標を達成して成功しているイメージを、より精彩にイメージすればするほど、自己効力感が高まることになります。
これら5つの要因が、プラスになったりマイナスになることで、自己効力感が決定されます。つまり、この5つの要因をいかにプラスに向けるか、ということが、自己効力感を高めることにつながっていきます。
では具体的に、自己効力感を高めるにはどのようなことをしたらいいのでしょうか。
1.成功体験を積み重ねる
自己効力感を決める最も大きな要因は、達成体験です。達成体験は、大きな目標であればあるほど、達成した時に自己効力感が高まります。
しかし大きな目標は、達成するまでに時間も労力もかかりますし、最初から高すぎる目標を設定してしまうと、途中で挫折する確率もあがってしまいます。
まずは達成するのが難しくなさそうな、小さな目標からでいいので、達成体験を積み重ねることが重要です。
2.実際に成功している人の話を聞く
自己効力感を決める要因の2つ目は、代理経験でしたよね。実際に成功している人の話を聞いたり、姿を見たり、その人の本を読むことで、自分にもできそう、という気持ちが高まります。代理体験は、あまり遠くのすごい人より身近な人の方が効果があるので、同じ職場の人、同じ業種の人など、親近感の沸く人の体験を見聞きするといいでしょう。
3.ポジティブな言葉を聞く
日本人というのは謙虚であることが美徳とされてきたので、つい自分のことを卑下したりする人が多いですよね。しかし、「私なんて」という言葉やネガティブな言葉を浴びることで、自己効力感は下がりやすくなります。周りの人からポジティブな言葉をかけてもらうことももちろん効果的ですが、まずは自分が発する言葉を、できるだけポジティブなものに変えていきましょう。
4.規則正しい生活で健康に気をつける
健康状態がよくないと、自己効力感は低下しやすくなります。できるだけ規則正しい生活を心がけ、食事も栄養のあるものを摂るようにしましょう。
運動が苦手な方は、ストレッチをするだけでも効果があります。ゆっくりストレッチをしたり、湯船に浸かって疲れを取ることで、睡眠の質も上がり、自己効力感が高くなります。
5.成功体験をイメージする
常に成功した自分をイメージすることで、想像的体験をプラスなものにするクセをつけることができます。成功した後のイメージだけでなく、そのために必要な行動やプロセスも合わせて具体的にイメージすることで、より効果が高まります。
6.カウンセラーにサポートしてもらう
なかなか自分だけでは成功のイメージも掴みにくい、自分1人ではポジティブなイメージが持ちにくい、という方は、カウンセラーにサポートしてもらうというのも効果的です。客観的に自分の長所を分析してもらうことで、具体的な成功体験をイメージしやすくなったり、ポジティブな言葉を聞くことで自己効力感が高まりやすくなります。
1人ではなかなか自己効力感が高まらない、という方は、メールカウンセリングや電話カウンセリングなど、気軽に受けられるオンラインカウンセリングを利用するだけでも、効果が望めます。
自己効力感は、誰かに決めてもらうものではなく、あくまで自分の中で決めるものです。自己効力感が高ければ、勉強や仕事だけでなく、人間関係もうまくいきやすいですし、もし失敗したとしても立ち直りが早く、次につなげよう、とポジティブでいられます。
自己効力感を高める方法は色々ありますが、ポジティブな言葉を使う、成功体験をイメージする、規則正しい生活を心がけるなどは今からでもできることなので、ぜひ試してみてください。
自己効力感が少しずつ高まってくると、成功体験が増え、その成功体験によってさらに自己効力感が高まっていく、といういいスパイラルが生まれます。無理のない範囲で、少しずつできることを日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。