子どもを持つことは人生を大きく変える、とても重要なライフイベントです。子どもを持つつもりのない人も増えているようですが、将来的には子どもが欲しくてもまだまだ先のことだと考えている人、出産を控えている人、はたまたすでに子育て中という方の中にも、子どもをうまく育てる自信がない方は決して少なくないことでしょう。
その背景には様々な要因がありますが、自信を失ってしまう要因や困った時の相談先などを知っておくことは、育児不安の軽減にもつながります。この記事が、子育てへの不安を抱えている方のご参考になれば幸いです。
目次
- おわりに
かつての日本では結婚して子どもを持つのが当たり前という風潮がありましたが、近年はそうでもなくなってきたようです。調査をもとに、子どもを育てることへの考え方の変化を見ていきましょう。
・Z世代の半数以上が子どもを持ちたいと思っていない
「僕と私と株式会社」がZ世代(調査時点で22~27歳)を対象に行った調査によると、「将来的に子どもを持ちたいと思いますか?」との質問に、「絶対に持ちたい」「どちらかというと持ちたい」と回答したのは47.0%でした。つまり、半数以上が子どもを持ちたいとは思っていないという結果となりました(「絶対に持ちたくない」15.6%、「どちらかというと持ちたくない」14.0%、「特に考えていない」23.4%)。
「子どもを持つかどうかを決める際に、何が最も大きな影響を与える要素ですか?」という質問に対しては、「経済的な安定」が46.8%と圧倒的に多い結果となりました。
・経済的な問題以外では、育てる自信がない声が目立つ
また、18歳から25歳までの男女を対象としたBIGLOBEの調査では、「将来、子どもがほしくない」というZ世代は45.7%で、その理由として「お金の問題以外」を挙げた人が最も多く(42.1%)、お金の問題とそれ以外の両方だと回答した人を含めると、8割以上にのぼりました。
お金の問題以外で子どもが欲しくない理由は、多いものから順に「育てる自信がないから」(52.3%)、「子どもが好きではない、子どもが苦手だから」(45.9%)、「自由がなくなる(自分の時間を制約されたくない)から」(36%)という結果となりました。
・東京都の調査でも育児への自信のなさが見られる
さらに、東京都が2023年に18~29歳の男女を対象に行った調査では、「あなたは子供を欲しいと思いますか」という質問に対し、18.4%が「子供を欲しいとは思わない」と答えました。
また、子どもを欲しいと思わない理由については、「子供を育てる自信がないから」が61%と最多で、次いで「育児にかかる費用が心配だから」(49%)、「自分の時間が取れないと思うから」(46%)との結果でした。
上記のような調査から、子どもを育てる自信がない人が決して少数ではないことが伺えます。実際のところ、身近な人たちとの会話や自分自身の思いの中でも、子育てに関する不安を実感する機会がある方もいることでしょう。
なぜ子どもを育てる自信がないのか、その理由を詳しく見ていきましょう。
・社会情勢や経済的な事情
前章で紹介した調査でも、子どもを持ちたいと思わない理由に経済的な事情が挙げられていました。子どもを育てるにはお金がかかることが若い世代にも広く知られ、物価や教育費、税の負担などは増えているのに収入はそれほど上がらない状況では、子どもを育てていく自信が持てないのはごく自然な成り行きと言えます。
また、仕事や家事との両立の難しさや子どもを取り巻く社会の目、地球環境や世界の先行きなど、子どもを持ちたいと思えない社会情勢も、子育てへの不安に影響を及ぼしていると思われます。
・体調やホルモンバランス、環境の変化
持病があったり、体力的に自信がなかったりする場合や、元々は問題なかった人でも妊娠・出産・産後の体調不良に悩まされている場合は、なかなか子どもを育てていく自信が持てないものです。
特に産後はホルモンバランスの変化や出産の身体的なダメージ、慣れない育児への疲れに睡眠不足が重なって非常にしんどい時期です。産後3ヶ月頃までは産後うつ病のリスクも高く、子どもを育てる自信を喪失しやすい状況です。
・パートナーが育児に消極的
一緒に子どもを育てていく立場であるパートナーが育児に消極的だったり、いわゆるワンオペ育児だったりすると、体力的にも時間的にも精神的にもとても負担が大きくなります。
本来一人で子どもを育てることはとても難しく、できなくて当たり前なのですが、一人で子どもを育てなくてはならないプレッシャーや、パートナーへの不信感など辛い感情が募っていくと、自ずと育児への自信も持ちづらくなります。
・育児を手伝ってくれる人がいない
パートナー以外にも育児を適切に手伝ってくれる人がいると、子育てのしんどさはかなり軽減されます。反面、安心して子どもや家事を一時的に任せられる人がいないと、非常に苦しい状況に陥ってしまうことがあります。
周囲に育児を手伝ってくれそうな人がいない場合は、それが育児不安の要因になることは充分考えられます。
・自分自身の親子関係に問題があった
自分が子どもから大人へと育てられてきた経験は、子どもを持つことや育児観に大きな影響を及ぼします。
自分自身の親との関係に葛藤や問題がある人は、「親にされたような酷いことを、自分も子どもにしてしまうのではないか」というような不安を抱きがちで、子どもを愛せる自信が持てないことも少なくありません。
・真面目で責任感の強い性格
子育てにはとても重い責任が伴うのは事実ですが、それを重く受け止めすぎてしまうと、育児が苦しいものになってしまいかねません。
親の努力や事前の対策ではどうにもならない想定外が起きるのが育児の大変なところで、子どもの発達やスケジュールなどが思い通りにならないこともよくあるのですが、まじめで責任感の強いタイプの保護者には、それがとてもしんどく感じられてしまうことがあります。
子どもへの評価や発育が自分への評価だと感じてしまうと、しっかり育てなくてはという思いが強まり、少しうまくいかないことがあると一気に自信喪失につながってしまいがちです。
・子どもの性質や発達
子どもの持って生まれた資質や発達のスピードが、親にとって受け入れがたいものである場合も、育児への自信が持ちづらくなることがあります。
子育てへの不安や自信の無さを一人で抱えるのはとても辛く、親子ともども苦しいことになりがちです。どうしたら解消できるのでしょうか。
・誰かに話す
子育て中は大人と話す機会が減ってしまい、充分に言葉でコミュニケーションを取れないことに孤独やストレスを感じることが少なくありません。
意識的に誰かにしんどさを話す機会を持つようにすると良いでしょう。家族や友人、子育て支援センターや預け先のスタッフなど、信頼できそうな人なら誰でもいいので話を聞いてもらいましょう。
・できるだけ心身を休める
乳幼児の育児中は特に、睡眠不足や疲労がたまりがちなのは致し方ないことなのですが、その状態だと物事を過剰に悲観的に捉えたり、普段なら気にならないことがとても辛く感じたりしやすくなります。
できるだけ心身を休め、少しでも睡眠をとって体力や気力を回復させると、状況は変わらなくとも気分や捉え方が少し楽になることがあります。
・完璧を目指さない
理想の子育て像や親として子どもにしてあげたいこと、想定する子どもの発達や振る舞いなどが、頭の中にある方も少なくないことでしょう。しかし、子どもは別の人格を持った存在なので、親の理想通りに子育てが進んでいくことはまずありません。
子どものために完璧にしなければと思ってしまうと、思い通りにならないときに非常に辛くなってしまいます。想定通りにならないのが育児だという前提を持ち、完璧を目指さないようにすると、肩の力が抜けて楽な育児につながります。
・子どもは皆で育てるものと考える
以前は「育児は母親の役割」という社会通念がありましたが、本来子育ては母親一人でできるような容易いものではありません。周囲の人やサービスの力を借りるのは甘えではなく、健全な育児に必要なことです。子どもは皆で育てるものと考えて、家族、友人、一時保育やベビーシッター、子育て支援センターのスタッフなど多くの人とともに育児をしていくのも、育児不安を軽減する一手段です。
臨床心理士とは・・・
悩みを抱える人との対話をベースに、問題の解決をサポートする「こころの専門家」です。
うららか相談室には、多くの臨床心理士が在籍しています。
育児不安に関する相談先には、以下のようなところがあります。
・自治体の相談窓口や保健センター
多くの自治体には育児相談に対応する窓口が用意されています。
また、保健センターにも保健師や心理士、言語聴覚士など子どもの発達や育児不安に関する相談に乗れる専門家が配置されていますので、気軽に相談してみましょう。
・子育て支援センター
子育て支援センターにも、保育士など子どもの発達や育児に詳しいスタッフがいます。個別相談に対応しているセンターもありますが、そこまでじっくり話したいわけではない場合でも、子どもを連れて遊びに行くついでに、ちょっとした不安やしんどさを話すこともできます。
同じくらいや少し年上の子どもを育てている保護者と交流することもできますので、情報交換や大人と話す楽しさが得られるだけでも、育児不安が軽減することがあります。
・保育園
保育園に通ったり一時保育を利用したりしている場合は、保育園に相談するのも良い方法です。家庭とは違う場所での様子を見ている保育士や職員に相談してみることで、子どもの意外な良さに気づけたり、安心できたりすることもあるでしょう。
・医療機関
主に心身の発達や健康面の心配については、小児科や児童精神科などの医療機関を受診して相談するのも良いでしょう。子どもの状態に見合った助言や治療が得られれば、安心感や子育てへの自信回復にもつながります。
・カウンセリング
子どもへの適切な接し方が分からない、育児が苦痛、子どもを可愛いと思えないなど、心理的なお悩みについては、カウンセラーに相談するのも手です。まだ子どもはいないけれどちゃんと子育てできるか不安で妊活に踏み切れない等、実際に育児中ではない場合にも相談可能です。
カウンセラーが在籍する医療機関や民間のカウンセリングルーム、自治体の相談機関などでカウンセラーに相談できます。
・電話やチャットでも相談できる
対面での相談には抵抗がある、時間帯が合わない等の場合は、電話やチャットによる相談もできます。
電話相談に対応している自治体や、企業が無料で行っている電話・チャット相談サービスもあります。
こういったサービスやオンラインカウンセリングなどを利用すれば、いつでもどこからでも相談が可能です。
現在の社会情勢では子どもを育てる自信が持てないのも自然なことですが、そもそも最初から自信を持った状態で親になった人のみが、不安なく子育てできるわけでもありません。自信を持っていても、いざ子育てをしてみたら不安に陥ることだってあります。
子どもを育てる自信がなくても何もおかしくありませんから、少しでも育児に疲れたり、自信がなくなってきたりしたら、遠慮せず誰かに相談してみましょう。
【参考資料】
https://boku-to-watashi-and.com/z-category1_detail/zview-article031
「Z世代に聞いた!将来・結婚観・子育てに関する意識調査」 僕と私と株式会社
https://www.biglobe.co.jp/pressroom/info/2023/02/230221-1
「子育てに関するZ世代の意識調査」 BIGLOBE
https://www.kodomoseisaku.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kodomoseisaku/syousikataisaku2024_siryo02
「若年層の結婚・子供に関する意識調査」(オンライン調査) 東京都