過去のことは変えられない、考えてもどうにもならないと分かっているのに、いつまでもクヨクヨと悩み続けてしまうことはありませんか。
「あの時どうしてあんなことを言ってしまったんだろう」
「あの人の態度がおかしかった。嫌われたのかもしれない」
「全然できなかった。自分はダメな人間だ」
など、ネガティブな思考が頭の中をめぐってやめられないことを、「反芻思考」や「ぐるぐる思考」といいます。
目次
- 反芻思考の原因
- おわりに
反芻思考とは、過去の出来事に関するネガティブな思考を繰り返し思い出し、一人で悩み続けてしまう傾向のことです。
「反芻」とは、牛や羊などが一度飲み込んだ食物を胃から口の中に戻し、再び噛んでからまた飲み込むことですが、過去の出来事についてのネガティブな思考を何度も思い出しては落ち込む様子が似ていることから、心理学的に「反芻思考」、わかりやすく「ぐるぐる思考」と呼ばれるようになりました。
また、人と接した後に自分の言動を振り返って落ち込んだり悩んだりすることは、「ひとり反省会」といわれることもあります。
嫌な出来事があった時に、そのことが頭から離れなかったり、布団の中で悩み続けてしまったりすることは多くの人が経験しています。しかし、際限なく悩み続けて、日常生活に影響を及ぼす状態は、以下のような病気や障害のサインである場合があります。
反芻思考の結果としてうつ病などの精神疾患を発症することもあれば、もともとADHDやASDなどの発達障害を持っていて、その特性から反芻思考をやめられないこともあります。反芻思考が止まらず、日常生活に影響がある場合は、早めに医療機関やカウンセリングで相談しましょう。
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反芻思考には、以下の2つのタイプがあります。
・リフレクション(Reflection)
リフレクションとは、「失敗の原因はなんだったのだろう?」のように、ネガティブな出来事そのものではなく、原因や理由について考え、自己分析をする思考のことです。次回同じ失敗を繰り返さないよう、原因を特定し対策ができるため、前向きな気持ちにつながることも多く、有益な反芻思考といえます。
・ブルーディング(Brooding)
ブルーディングとは、ネガティブな気分や状況に対して、自分自身の性質や、自分を取り巻く環境の理不尽さのせいにしようとする思考です。
「自分が失敗したのは自分がダメな人間だからだ」「周囲の理解がないせいでこんな結果になった」などと不満を募らせてしまいます。
ブルーディングはうつ病などとの関係が強く、精神面での不調が出やすい反芻思考といわれています。
反芻思考が繰り返される原因には、以下のようなものがあります。
・ネガティブな気分
反芻思考はネガティブな気分のときに生じやすいといわれています。ポジティブな気分のときにはポジティブな記憶が、ネガティブな気分のときにはネガティブな記憶が想起されやすくなるのです。ネガティブな記憶を想起したことによってさらに気持ちが落ち込み、その結果、反芻思考が持続するという負のループに陥ってしまいます。
・まじめで完璧主義
完璧主義の人は、「失敗は許されない」という気持ちが強く、常に気持ちが張り詰めていて、心が落ち着く時間がなくなり、知らず知らずのうちにストレスをためてしまいやすいです。また、理想が高く、現実とのギャップに苦しむこともあります。周囲に協力を求めることが苦手で、自分ひとりで問題を抱え込みやすい傾向があります。
・繊細
繊細な人は、感受性が高く、相手の表情や変化に敏感で、些細なことに傷ついてしまうことがあります。マイナス思考に支配されやすく、過去の失敗を引きずりやすい傾向があり、反芻思考に陥りやすくなります。
また、上記のほか、精神疾患の影響で反芻思考が止まらないことや、発達障害の特性で反芻思考に陥っている場合があるため、日常生活に支障が出ているときは、悪化する前に医療機関やカウンセリングで相談してみましょう。
反芻思考を止めるにはどのような方法があるのでしょうか。
・別のことを考える
反芻思考が始まったと気づいたら、別のことに意識を向け、悩む時間を作らないことが効果的です。映画やテレビや漫画、旅行、趣味のことなど、何でもいいので自分の好きなことや楽しいことを考えましょう。「考えないようにする」とかえって意識してしまうので、「別の何かを考える」ことが重要です。
・自然に触れる
自然の中でリラックスしたり散歩したりすることによって、反芻思考の回数が減るといわれています。また、日光を浴びると、脳内で「セロトニン」という神経伝達物質が分泌されます。セロトニンは、分泌されると幸せな気分を感じやすくなるため、「幸せホルモン」とも呼ばれています。セロトニンが不足すると、不安になったりイライラしたり、気分の落ち込みなどの症状が現れます。メンタル不調を防ぐためにも、自然の中で日光を浴びることを心掛けましょう。
・運動する
運動することにも、精神面の不調を改善する効果があります。適度な運動によって、反芻思考をはじめとする様々な精神疾患の症状が改善しやすくなります。また、運動は脳とセロトニン神経を活性化させます。運動の中でも、単調な有酸素運動(ランニング、水泳、サイクリングなど)が効果的です。
・マインドフルネス
マインドフルネスとは、「過去・未来や余計な思考にとらわれず、今、この瞬間に意識を向ける」心の在り方です。心配事や不安な気持ちなど、つい頭に浮かんでしまうことを鎮め、「今」だけに集中している状態を意識的につくっていくのがマインドフルネスであり、その手法として「瞑想」が用いられています。
マインドフルネス瞑想を実践することで、ネガティブな反芻思考の頻度を減らし、自分自身の状態を冷静に受け止められるようになるため、自分の感情を上手くコントロールすることができるようになります。
マインドフルネス瞑想はいつでもどこでもできますが、習得するには時間がかかることがあるため、専門家に相談しながら一緒に習得していくのが効果的です。
反芻思考を止める方法をご紹介しましたが、自分だけでは止めるのが難しく、つらい思いをしている人も多いのではないでしょうか。そんなときは、カウンセリングを受けてみるのもおすすめです。
カウンセリングというと、うつ病などの精神疾患を抱えている人が受けるものだというイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実際は、悩みの度合いに関係なく、誰でも受けることができます。
カウンセリングでは、じっくりと話を聞いてもらい、自分の状況の整理を行います。その作業をカウンセラーと一緒に行い、提案や助言をもらいながら、悩みの解決や改善へのきっかけを自分でつかむことができるよう、導いてもらえるのです。
いつ、どんなとき、どのような場面で反芻思考が始まってしまうのかをカウンセラーと一緒に分析し、整理することで、反芻思考に陥ってしまう自分自身への気づきを得ることができるかもしれません。
なお、カウンセリングは、病院やカウンセリングルームでの対面のものだけでなく、オンラインのビデオ通話や電話、メールやチャットなどを使ったものもありますので、自分の状況に合わせて利用してみてください。
また、カウンセリングでは、反芻思考に対して、マインドフルネスや認知行動療法を用いて、解決や改善への手助けをすることもあります。
・マインドフルネス
マインドフルネスの考え方は、カウンセリングや心理療法に多く取り入れられ、うつ病や不安障害などの治療や予防にも用いられています。カウンセラーと一緒にマインドフルネス瞑想を実践することで、その後も自分で継続していけるやり方を習得することができます。
・認知行動療法
認知行動療法とは、自身の考え方の癖や行動パターンに気付き、見直すことで、問題やストレスへの対処法を身につけていく心理療法のひとつです。日常での出来事を今より少しうまくいくように、物事の捉え方や行動を考えていきます。多くの精神疾患で選択されている治療法で、治療効果が高いとされており、ネガティブな思考やストレスを抱えやすい人におすすめです。
「考えたくないのに考えてしまう」「過去の出来事を思い出しては落ち込んでしまう」のは誰にでも起こりうることですが、いつも反芻思考に捉われ、苦しい思いが続いている状態は注意が必要です。「自分の性格だから」と諦めたりせずに、紹介した方法を試してみてください。それでも改善しない場合は、早めに専門家に相談しましょう。