新型コロナウイルスによる肺炎が世界中で流行をみせていますね。ニュースでもインターネット上でも様々な情報が錯綜し、不安な日々を送っていらっしゃる方も多いと思います。お仕事が在宅勤務・リモートワークに切り替わったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。感染症の世界的大流行を示すパンデミックという言葉が使われるのは、2009年に流行した新型インフルエンザ以来、11年ぶりだそうです。とはいえ、世界中で都市封鎖が行われるほどの混乱はなく、このような事態は誰も予測できなかったことでしょう。
リモートワークが増える中で、かつてない経験にストレスを感じている方も多いと思います。ここでは、リモートワークで生じやすいストレスについて原因と対処法をお伝えしていきます。
目次
- リモートワークによってメンタル不調になりやすい人の特徴は?
リモートワークでストレスを感じる要因には、大きく以下の3点が挙げられます。
1. 環境面でのストレス
2. 仕事面でのストレス
3. 家庭面でのストレス
それぞれの要因について、詳しくみていきましょう。
1. 環境面でのストレス
出社して仕事をすることとリモートワークの大きな違いは、仕事をする場所とプライベート空間が一緒になりやすいということです。今回のような状態でなければ、リモートワークとはいえシェアオフィスなどを利用して仕事のスペースを確保している方もいらっしゃると思います。しかし、今回の新型コロナウイルスによる影響下では、ご自宅で仕事をせざるを得ないでしょう。
仕事とプライベートの空間が物理的に別れているということは、実はとても健康的です。みなさんの中にも、ONとOFFの切り替えが得意ではないと感じている方は少なくないのではないでしょうか。そもそも人間は、習慣化した行動にストレスを感じません。学校に行けば勉強し、職場に行けば仕事をするというように、場所を変えることによってやることが変わるということは習慣化しやすく、また疑問もわきにくいものです。目的によって場所を変えることは非常に合理的でわかりやすいことなのです。リモートワークでは場所を変えることによって、行動の変化を促すことができないので、自分自身で気持ちを切り替えるという作業が必要になります。これは大変負担のかかることです。
2. 仕事面でのストレス
「出社せずに仕事できるなんて最高!」と思いがちなリモートワークですが、意外とストレスが溜まります。仕事面では、以下のような点がストレスの要因になると言われています。
・長時間労働になりがち
自宅でいつでも仕事にとりかかれるということは、休憩や終業の時間が決められないということにもつながります。「ここまでならできるかも・・・」と業務時間を引き延ばしてしまいがちになるので、タスク管理と時間管理のどちらが自分に向いているのかきちんと考えて取り組みましょう。また、自宅にいることで集中力が落ちてしまい、結果的にだらだらと仕事をしてしまうこともあるので、テレビを消したりスマホを遠くに置いたり、集中できる環境を作ることも大切です。
・コミュニケーション不足
リモートワークでは、わからないことをチームで整理したり他の人の視点を取り入れたり、コミュニケーションによって生まれる成果を得にくくなります。ウェブ会議やチャットなどで補える部分も多いですが、実際に会って話すのと何かしらの媒体を通して話すのでは情報量に圧倒的な差があります。普段からリモートワークでない方にとっては、慣れるまではコミュニケーションのしづらさを拭えない部分があるでしょう。
・孤独感
出勤するということは、必然的に人の多い場所へでかけることになります。人がいることをわずらわしく感じることもあれば、ちょっとしたざわざわ感に落ち着くこともあるはずです。同僚とあいさつを交わすことも人とのつながりや社会に所属する実感をもつための刺激です。リモートワークではそのような刺激が極端に排除されるので、孤独感が強くなるといわれています。個人差はありますが、人間にとって孤独は強いストレスです。定期的なウェブ会議やメッセージでの報告など、社内の人と連絡をとる機会を作りましょう。また、1日の中で散歩などの時間を設けて、意識的に気分転換をするようにしましょう。
3. 家庭面でのストレス
リモートワーク中は自分だけでなく、家族から見ても仕事とプライベート時間との境目がわかりにくくなります。休校やパートナーのリモートワークなど、普段と違う家族の様子に戸惑う部分も出てくると思います。
・家族と離れられないストレス
「家族と距離を置きたい」と感じたことはありますか?普段ならば、仕事の都合で家族との時間は限られてしまいます。半ば強制的に家族との時間を制限されるわけですから、「もっと家族と一緒にいたい」と感じている方も多いですよね。一方で、普段は離れているからこそ適度に距離を保っていられるけれど、四六時中一緒に過ごすことについて考えたことがないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
介護や障害児支援には「レスパイトケア」というサービスがあります。介護や育児から、家族が解放されて休息をとる時間が必要という考え方です。今回のような状況では、家族から一時的に離れてリフレッシュすることがとても難しくなります。別の部屋で仕事をしたり、仕事の時間をあらかじめ家族に伝えたり、家族にとって程よい距離を保てるように工夫しましょう。
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次のような特徴のある人は、リモートワークによってメンタル不調が起きやすいかもしれません。
1. 普段の外出が多い人
外出が多く、家で過ごすことに慣れていない方は、環境が変わることでストレスが生じやすくなります。
2. ワンルームで暮らしている人
生活空間が限定されるワンルームは、もともとストレスが溜まりやすいといわれています。椅子に座って仕事をしたくても、スペースを取れなかったりベッドがすぐ近くにあることで寒い日などはベッドに戻りがちになったりと小さな不便さがつのりやすい場所でもあります。
3. 休日は昼まで寝ている人
平日はなんとか規則正しい生活を送っていても、休日はゆっくりしたくなるもの。自宅はゆっくりするもの、という意識が根付いてしまっていると、在宅ワークでもなかなか集中できず、昼から始めて夜遅くまで仕事をするようなスタイルになってしまう可能性があります。そういった不規則な生活が長く続くと、自律神経のバランスが崩れてメンタルの不調を招きやすくなります。
慣れないリモートワーク生活でメンタル不調が起きるときには、以下のようなサインがあります。
1. 不眠
メンタルの不調は睡眠に表れやすいです。とくにリモートワーク中は家にこもりきりになるので、運動量が足りずに眠りが浅くなり不眠傾向になることもあるでしょう。不眠があると脳が十分な休息をとれないため、うつ傾向などメンタル不調が進行していく可能性があります。
2. 食欲の変化
生活リズムが乱れると食欲にも影響があります。人間の不安な気持ちを抑えたり喜びを感じる気持ちを調整したりするセロトニンという脳内物質に変化が起き、食欲がなくなったり逆に食べすぎてしまったりしやすくなります。セロトニンの減少はうつ状態を招きやすいので、食欲の変化で自分の心に目を向けるようにしましょう。
3. 不安感が続く
食欲と同様にセロトニンの量が変化することで、漠然とした不安を感じやすくなるかもしれません。リモートワーク中は人とのコミュニケーションが減るため、気を紛らわせたり不安を吐き出したりと不安の解消が難しいのも要因のひとつです。
メンタル不調は放っておくと、うつ病や不安障害などにつながっていく可能性があります。不調を感じたら、以下のような方法で対処しましょう。
1. 相談相手を作る
ちょっとした相談をできる相手を探しましょう。うららか相談室のカウンセリングサービスを利用してもよいですし、公共の機関を利用することも可能です。お住いの都道府県により、ホットラインやLINEによる相談窓口を設けているところもあります。
うららか相談室のオンラインカウンセリングは、自宅で安心して受けられるビデオカウンセリング、電話カウンセリングの他に、専用ページでカウンセラーと文字でやり取りするメッセージカウンセリングがあります。
2. 生活リズムを整える
ちょっとした不調は、リモートワーク中の不規則な生活から起きている可能性があります。朝起きる時間を決め、明るい場所で仕事をするなど、できることからリズムを整えていきましょう。自律神経が整い、漠然とした不安を解消しやすくなります。
臨床心理士とは・・・
悩みを抱える人との対話をベースに、精神分析や心理療法を使って問題の解決をサポートする「こころの専門家」です。
臨床心理士の資格は厳しい学習条件が求められ、心理業界では長年にわたり根強い信頼性を持っています。
うららか相談室には、多くの臨床心理士が在籍しています。
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メンタル不調を起こさないために、予防していくことも必要です。以下のような点に気をつけましょう。
1. 規則正しい生活を送る
普段不調を感じない人ほど、規則正しい生活の大切さを忘れがちです。朝きちんと起きて、栄養バランスを考えた食事をとり、0時を超える前に就寝するようにこころがけましょう。自律神経を正常に保つことが大きなポイントです。
2. 換気をする
外に出ることが難しい状況では、1日に2回程度換気をしましょう。新鮮な空気を吸うことで気分転換になりますし、風邪の予防にも役立ちます。
3. 部屋でできる運動をする
適度な運動は脳内物質ドーパミンの分泌量を整え、ストレス解消の効果があります。部屋の中でも取り組みやすいストレッチなど運動をするようにこころがけましょう。
場所が制限されたリモートワークでは、想像以上にストレスがかかっています。規則正しい生活と気分転換を行い、健康的な生活を保っていけるように心がけてくださいね。
(参考文献)
e-ヘルスネット 厚労省 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-074.html(参照 2020-03-31)
ここナビ 東京都福祉保健局 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kokonavi/campaign/campaign0203.html?yclid=YSS.EAIaIQobChMI1suc55fB6AIVy6qWCh1sXwhIEAAYASAAEgJrk_D_BwE (参照 2020-03-31)
厚労省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html (参照 2020-03-31)