「介護うつ」という言葉を聞いたことがありますか?この記事をご覧の方は、ご家族の介護中であることが多いと思います。介護を続ける中で「終わりがみえない」「気の休まるときがない」と絶望的な気持ちを抱えることはないでしょうか。それは介護うつの始まりかもしれません。ここでは、介護うつの特徴や介護を抱え込みすぎないための注意点をお伝えいたします。
目次
- 介護うつとは?
- おわりに
介護うつとは介護者がそのストレスや疲れによって、うつ状態・うつ病を発症することを指します。「介護うつ」という病名ではありませんが、うつ状態に至るきっかけが介護であることはめずらしいことではありません。
介護から離れることができれば、自然に回復するかもしれませんが、なかなかそうはいきません。介護の負担を減らしつつ、適切な治療を受ける必要があります。
臨床心理士とは・・・
悩みを抱える人との対話をベースに、精神分析や心理療法を使って問題の解決をサポートする「こころの専門家」です。
臨床心理士の資格は厳しい学習条件が求められ、心理業界では長年にわたり根強い信頼性を持っています。
うららか相談室には、多くの臨床心理士が在籍しています。
メッセージ・ビデオ・電話・対面、あなたが一番話しやすい方法で、悩みを相談してみませんか。
介護うつの症状には以下のようなものがあります。
・以前と比べて食欲がなくなった
・ここ3か月で体重が急激に減少した
・寝つきが悪くなった
・夜中に何度も目が覚めてしまう
・イライラする
・何事も悪いほうに考えてしまう
うつ状態のときには、自分で感じるよりもずっと体も脳も疲れています。客観的にご自身の状態を確認してみましょう。
介護うつにならないためには、介護の負担を減らすことが大切です。「大事な家族だから、なるべく自分で世話をしたい」と感じる方も多いと思いますが、介護は長期戦です。利用できる制度やサービスを活用して、ご自身の負担を減らしましょう。
①介護保険制度
まず考えたいのが介護を受けるご本人の介護保険を利用することです。65歳以上の方、または40歳~64歳までの「特定疾病(16種類)」の方は要介護認定を受け、介護保険を利用してサービスを受けることができます。ヘルパーによる訪問介護や入浴サービスなどを利用することで、介護者の負担を軽減することができます。制度の利用については、お近くの地域包括支援センターを利用しましょう。介護認定がおりると、ケアマネージャーに専門的な相談をすることができます。とても心強い存在なので、頼れるとよいと思います。
また、介護認定を受けずに自費で介護サービスを利用するという方法もあります。金銭的な負担は増えますが、うまく利用してご自身の負担を減らしてもよいでしょう。
②自分の時間を確保する
介護をしていると、介護そのものに自分の生きがいを感じることも少なくありません。自分のすべてをかけて、家族の介護をしようという使命感に駆られることもあります。しかし、介護にはいつか終わりが来ます。介護に自分のすべてをかけていると、そのとき大きな喪失感に襲われてしまうでしょう。介護に熱中しすぎないためにも、自分の時間を確保することが必要です。
週に1回は外出をするという自分の決まりごとを作ってもよいですし、市民講座などを利用して趣味を楽しんでもよいと思います。介護によって自分の世界を狭めすぎないことが大切です。
③睡眠をゆっくりとる
うつのとき、よくみられる症状は不眠です。人の体は眠ることによって回復します。介護のために睡眠時間が短くなってしまうことはよくあることですが、夜中じゅう気を張っていなければならない状況はなるべく避けましょう。ショートステイなどを利用し、介護が必要なご家族から少し離れて休む時間を持てるとよいですね。
④相談する場所をもつ
介護に限らず、1対1の関係を続けていると「何もかも自分でやらなければ」という思いが強くなり、他の方法が浮かばなくなりがちです。親しい友人や専門のサービスに相談することはとても大切です。自分では気が付かなかった心の負担を知ることができ、良い解決方法が見つかることもあります。
もしも介護うつになってしまったら、どうすればよいでしょうか。うつの適切な対処をしながら、環境を整えるために以下のようなことが必要です。
①精神科や心療内科を受診する
すでに介護うつになってしまったかもしれないと感じる方は、一度、医療機関を受診しましょう。精神科や心療内科の受診に抵抗がある方もいらっしゃると思いますが、うつになってしまった状態をご自身の努力で戻すことはとても難しいです。不眠や不安感、焦りについて医学的な助言を受けることをおすすめします。
②カウンセリングを利用する
治療を受けることと並行して、カウンセリングで課題を整理することもよいと思います。うつ状態にあると、自分でも気づかないうちに悪いほうへ考えが向かってしまったり極端な考えに陥ってしまったりします。カウンセラーと一緒に状況を整理することで必要以上に心配していたことに気づくかもしれません。
③他の家族に助けを求める
うつのときは頑張ることができなくなります。これまで介護を一生懸命やってきた方こそ、今までと同じように頑張る気力がわかなくなってしまうでしょう。できるだけご家族に協力を求め、ひとりにかかる負担を減らしていけるとよいと思います。
④介護休業を取得する
介護をしながら働いている方は、介護休暇や介護休業を取得しサービス利用やご自身の負担軽減のために環境を調整しましょう。介護休業は1年に通算で93日まで取得することができます。まとめてお休みをとり、ケアマネージャーや地域包括支援センターと相談して負担の少ない形で介護を続けることができないか、または施設入居など検討できないか考えてみましょう。また、介護休暇は1日単位で年間5日まで取得することができます。介護によって有給休暇が足りなくなってしまいそうなときなど、上手に活用していきましょう。
介護疲れの辛いストレス、一人で悩み続けないでください。
このようなことでお悩みではありませんか?
うららか相談室では、臨床心理士や社会福祉士などの専門家にメッセージ・ビデオ・電話・対面で悩みを相談することができます。
ご家族を大切にしている方ほど、ご自身の思いと介護の負担のバランスがとれず思い悩んでしまいがちです。介護負担を軽減することは、ご家族を大切にしないということではありません。家族全員が健康に笑顔で過ごせるように、頼れる機関やサービスを利用する必要があります。ご自身の健康を第一に、ご家族のことも考えていけるとよいと思います。
【参考文献】
厚生労働省 育児・介護休業制度ガイドブック