せっかちな人は珍しくないですよね。歩いたり話したりするのが早い人やいつも慌ただしくイライラしている人は、せっかちな印象を他人に与えやすいです。人がせっかちになるのは、一体どのようなことが原因なのでしょうか。また、せっかちな性格を直すにはどうすればいいのでしょうか。
目次
- まとめ
せっかちな人はのんびりと休むのが苦手で、仕事だけでなくプライベートでも忙しく過ごしがちです。特に予定がなくても、あれこれと考え事をしたりしてしまうため、気の休まる時間が少ない傾向があります。
せっかちな人は自分の時間を無駄にしたくないという気持ちが強く、時間に厳しい人が多いです。待ち合わせ時間のギリギリに到着する人やスケジュールが押すことにイライラしやすくなります。
せっかちな人は歩いたり話したりするスピードが速いことが多いです。横断歩道に差し掛かる前に信号が変わりそうになると走って渡ったり、ご飯を食べるのが人一倍早かったりすることがあります。
せっかちな人はゆっくりと待つのが苦手であることが多いです。自分が行ってみたかったレストランでも待ち時間があることが分かった途端に入店を諦めたり、美容院や病院などで早く自分の名前が呼ばれないか気になって仕方がなかったりすることがあります。
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せっかちな性格は、時間を有効に使ってものごとを早く終わらせることができるという点では長所となりますが、同時に次のような短所といえる特徴があると考えられます。
心疾患の患者によく見られがちな行動様式に「タイプA行動パターン」という分類があり、主にせっかちな特性を持っています。こうした分類について、簡単に表すと次のようになります。
・タイプA行動パターン
せっかち、短気、敵意を抱きやすく攻撃的
・タイプB行動パターン
マイペース、穏やか、敵意を抱きにくい
・タイプC行動パターン
几帳面、真面目、他人に気を遣うことが多い
タイプA行動パターンはストレスを受けやすく、心疾患のリスクが高いことが分かっています。また、自分が抱えているストレスへの自覚が少ない「アレキシサイミア傾向(失感情症)」という性格特性との関連が指摘されています。アレキシサイミアそのものは病気ではありませんが、心身症(過敏性腸症候群などのように、ストレスが原因と考えられる身体の不調)を経験しやすくなると考えられています。
タイプB行動パターンはタイプA行動パターンの特徴を持たず、効率的にストレス対処を行うことが分かっています。また、タイプC行動パターンはストレスに自覚していながらもうまく対処できずにストレスをためやすいと考えられています。
せっかちな人は、仕事や家事で忙しかったり、ゆっくり休む時間が少なかったりするだけでなく、例えば「ものごとがうまくいかないと感じて落ち込みやすい」といったように、心理的にストレスへ対処することが難しく、自分でも気が付かないうちにストレスがたまりやすくなります。ストレスがたまると、不眠や食欲不振、頭痛、肩こりなどの身体的不調も現れやすくなります。
忙しく時間に追われていると、丁寧にものごとに向き合うことが難しくなります。仕事などが早く終わることも多いですが、ミスを招きやすくなると考えられます。
せっかちな人は時間に厳しかったり他人を急かしてしまったりすることで、相手に怖い印象を与えてしまう場合があります。このことが対人関係において不利益を被る可能性もあるでしょう。
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せっかちとして表されやすいタイプA行動パターンは生まれつきの性格だけでなく、ある心理的な性質と環境が複雑に合わさったりしてできると考えられています。その心理的な性質や環境として考えられるものを挙げてみます。
ここでいう恐怖心とは、何かしらの出来事を受けたときに抱く感情のことではなく、常に抱えている「自分の価値や幸福」に対する恐怖心や信念のようなものを指します。根本的に「自分の価値や幸福は他人によって増えたり減ったりする不安定なものだ」といったように捉えがちな人は、せっかちになりやすいと考えられています。しかし、このような恐怖心が強いことはなかなか自覚することが難しいとされています。
自分の価値や幸福が不安定なものであると捉えている人は、それらを守ろうとするために完璧主義的になりやすく、無意識にあった恐怖心が自分の中で自覚しやすい考え方として現れます。例えば、「急がなければいけない」「努力しなければいけない」「他人に勝たなければいけない」といった完璧主義といわれるような心理的特徴を持つ人は、せっかちになりやすいと考えられています。
自分が置かれている環境として、家事や育児で時間に余裕がないこと、仕事や勉強で他人と競争すること、目標を達成することが身近なものであればあるほど、完璧主義的な考え方によって自分の言動にせっかちな特徴が現れやすくなると考えられます。
せっかちを直すために考えられる方法について紹介していきます。
完璧主義的な心理がせっかちな言動を生むことから、ものごとに完璧さを徐々に求めないようにすることは効果的であると考えられます。例えば、家事はいつもの8割程度できればOKとする、仕事は時間を決めて切り上げるといったことが挙げられます。また、「~しなければいけない」「~すべき」という捉え方を無意識的にしていることも多いので、ものごとに取り組もうとしているときに、まずは「どうして『~しなければいけない』と思うのか」というところに立ち返り、その意味について考えてみるのもいいでしょう。
せっかちな人はストレスに気づきにくいため、意識的にゆっくりと過ごす時間をつくってストレスを解消することが大切です。また、せっかちな人が抱えやすい「時間に対する過剰な切迫感」から離れることは効果的であると考えられます。ただし、逆に「ゆっくりと休まないといけない」と義務的に感じて、ストレスをうまく解消できない人も少なくないので、少しずつ休むことに慣らしていけるといいでしょう。
自分のせっかちな一面が顕著に表れていると感じたときには、深呼吸をするようにしてみましょう。せっかちな行動が目立つときは、自分の抱えている恐怖心が大きくなっているかもしれません。ストレスを感じていると人は無意識に呼吸が浅くなり、酸素が不足してリラックスしにくくなります。意識的に深呼吸をすることで落ち着いて行動しやすくなります。
「人に任せるよりも自分でやったほうが早い」と思って一人で全てのものごとをこなそうとすると、時間に余裕がなくなり、せっかちな言動が現れやすくなります。かえって時間がかかりそうに思えてしまうかもしれませんが、少しずつ周りに頼るようにしてみましょう。
カウンセリングでは、せっかちになる原因や対処法をカウンセラーと一緒に考えていきます。
例えば、カウンセラーとの対話の中で、自覚することが難しかった根本的な自分の性格に気づきやすくなったり、完璧主義的な捉え方を和らげていくことをカウンセラーと一緒に考えたり、行動や環境を整えたりすることができます。
うららか相談室では、ビデオ・電話・メッセージ・対面から好きな方法で、自分に合ったカウンセラーを選んで、悩みや自分の性格のことを相談することができます。
せっかちな人は、話すのが早い、待ち時間が苦手、などの特徴がよく見られます。せっかちな特徴が見られやすい性格特性の分類に「タイプA行動パターン」というものがあり、この行動パターンはストレスによる心身の不調に陥りやすくなると考えられます。「やらないといけない」と思うことが多いほどせっかちになりやすいので、物理的に「やらないといけない」と感じることを減らしたり、せっかちな特徴が現れたときには深呼吸をしてリラックスさせてあげたりするようにしましょう。カウンセリングでは、せっかちになる根本的な原因や、それによって起こる問題の対処法などについてカウンセラーと一緒に考えていくことができます。
<参考文献>
中野敬子(1998)TypeA行動パターンの行動分析学的研究, 慶応義塾大学大学院社会学研究科紀要, No.48, pp.101-105
佐藤豪(1996)タイプA行動パターンとストレス反応, 行動医学研究, No.3, Vol.1, pp.8-15