近年、企業にとって、働く人の心の健康を守ることは大切な課題になっています。厚生労働省の調査によると、1年間(令和5年11月1日~令和6年10月31日)にメンタル不調により連続1か月以上休業または退職した方がいる事業所の割合は12.8%となっています※。つまり、1年間に1割以上の会社で、実際にメンタル不調による問題が発生していることがわかります。
メンタル不調になってしまうと、元の状態に戻るまでに時間がかかることも少なくありません。その対策の一つとして、管理職による部下への心のケアである「ラインケア」が重視されています。本記事では、企業で効果的なラインケアについて解説していきます。
目次
- ラインケアとは
- おわりに
ラインケアの「ライン」とは、部下・上司・その上司といった職場内の指揮命令系統のつながりを指します(図1)。ラインケアとは、このラインの中で、管理職が部下の心の健康を守るための取り組みのことです。
[図1]A社員のラインの例
ラインケアはなぜ必要なのでしょうか。それは、企業や組織には、労働者の危険や健康障害を防止する義務があるからです。これを一般的には、「安全配慮義務」と言います。
例えば、労働契約法の第5条には下記のように定められています。
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」
このように、ラインケアの実施は企業・組織にとって法的な観点からも欠かせない取り組みといえます。
また、ラインケアを行うことで、次のようなメリットもあります。
①部下のメンタル不調を未然に防止できる
日頃から丁寧なラインケアを行うことで、部下のメンタル不調を早期に察知し、深刻化する前に対処することが可能です。また、メンタル不調での欠勤や休職を防ぐ効果もあります。
②メンタル不調による退職等での人材流失を予防できる
メンタル不調が深刻化すると、就業継続が困難になり、退職に至るケースもあります。採用・育成にコストをかけた人材を失うことは、企業・組織にとって大きな損失です。ラインケアはこうした人材流出を防ぐうえでも有効です。
③働く人の生産性を向上できる
ラインケアが機能している組織は、働く人の心の健康が保たれており、一人一人が高いパフォーマンスを発揮しやすくなります。結果として、組織全体の生産性の向上も期待できます。
④企業イメージがアップする
働く人が健康でいきいきしている組織は、対人関係も良好であることが多く、組織全体の雰囲気も良くなる傾向があります。ラインケアを行うことで、結果的に対外的な企業のイメージアップにつながることがあります。
以上のように、職場におけるラインケアの実践は、法令遵守の観点からも、組織の持続的な発展の観点からも、重要な意義を持っています。
国内最大のオンラインカウンセリング「うららか相談室」の法人向けサービスでは、臨床心理士・公認心理師によるオンラインでのラインケア研修も提供しています。
企業の要望に合わせて研修内容をカスタマイズしたり、実施時間や対象者などを柔軟に設定することも可能です。
厚生労働省では、メンタルヘルスケアとして次の4つを挙げています。
特に、管理職は働く人との関わりが最も多く、ラインケアは組織のメンタルヘルス対策の中で大きな役割を担っています。また、ラインケアは特殊な技術ではなく、知識があれば誰でも行うことができます。研修などを通して、管理職一人一人が、ラインケアについて正しい知識を身に着けることが有効です。
では、具体的なラインケアの取り組みを紹介していきます。
①普段からの対応
まずは、部下との信頼関係を築き、相談しやすい環境を作っておくことが大切です。日常的に上司から声掛けを行ったり、普段の様子を見ておくことで、部下の変化に気づきやすくなります。
②いつもと違う部下への対応
普段の対応の中で、部下に下記のようなサインが見られたら注意が必要です。
1)勤怠面
・遅刻・早退・欠勤が増える
・残業や休日出勤が不釣り合いに増える
・休みの連絡がない(無断欠勤)
2)業務面
・仕事の能率が落ちる
・業務の成果がなかなかでてこない
・報連相や職場での会話が減る(又は逆に多弁になる)
3)行動面
・活気・元気がない
・不自然な言動が目立つ
・ミスや事故が増える
・服装の乱れや不潔さが目立つ
上記のようなサインが見られたら、ためらわずに声をかけましょう。例えば「最近遅刻が増えているけれど、大丈夫?」などと事実を元にすると、確認しやすいです。部下が話をしてくれそうであれば、丁寧に傾聴しましょう。批判したり、結論を急がないようにします。その上で、メンタル不調の可能性があったり、不安を感じた場合は、産業医、社内の健康管理スタッフ、医療機関への相談を促します。
③休職・復職時の対応
部下が休職することになった場合は、回復まで時間がかかることもあるので、焦らずに見守ることを意識しましょう。休職中は、職場や仕事から完全に離れて療養に集中できるように配慮することも大切です。
職場復帰が決まったら、本人と相談しながら、職場環境の調整をしましょう。職場復帰時もメンタル不調のリスクが高い時期ですので、本人の希望を聞きながら、丁寧に対応することが大切です。
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ラインケア研修、セルフケア研修、アンガーマネジメント研修、ハラスメント研修など、様々なテーマでの研修を提供可能です。
ラインケアの実践には、知識を身に着けた上で、管理職自身が日頃から準備しておくことが大切です。ラインケア研修では、講義を通して知識を身に付けたり、事例検討で実践方法を学ぶことができるため、ラインケアの実践に役立ちます。
ラインケア研修の選び方を3点ご紹介します。
①実施内容
ラインケア研修では、ラインケアに関する基本的な知識だけではなく、職場で実践できるような事例検討やグループワークを取り入れることが有効です。また、自社で特に取り上げたい内容等があれば、研修内容をカスタマイズできるかどうかも確認しておくとよいでしょう。
うららか相談室では、法人向けのラインケア研修にも対応しています。組織・企業の要望に合わせてカスタマイズすることも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
②実施方法
ラインケア研修は主に下記の方法があります。職場の状況に合わせて選ぶことが望ましいです。
・対面
会議室などで集団で実施する方法です。研修内ではグループワーク等の双方向のやり取りが可能です。1拠点での勤務や、出社勤務中心の企業や組織に向いています。
・eラーニング
あらかじめ用意した動画を、参加者が任意のタイミングで視聴する方法です。時間や場所を選ばないため手軽ですが、一方通行の講義形式に限られることが多く、双方向の学習には向きません。
・オンライン
オンライン会議ツールを使用して集団で実施する方法です。リモートワークの方や、遠方の方も参加できるメリットがあります。会議ツールを利用して、研修内ではグループワークなどの双方向のやり取りができる場合もあります。
③料金
料金は研修サービスによって大きく異なりますが、数万~数十万で実施できるところが多いです。全ての管理職が研修を受けて知識をアップデートできるよう、定期的にラインケア研修を行うことが望ましいため、定期的に継続可能な価格かどうかも選定の重要なポイントです。
うららか相談室では、オンライン研修を中心に、低価格のプランをご用意しています。カウンセリングと研修がセットになったプランもございますので、お気軽にお問い合わせください。
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ラインケアは、企業や組織にとってなくてはならない取り組みです。職場で効果的なラインケアを実践し、一人一人が働きやすい職場づくりを目指しましょう。
※厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)」