早期発見・早期治療が大切なのは多くの病気に言えることですが、うつ病もまた例外ではありません。うつ病にはどんな行動や特徴があるのか知っておくことで、より良い予後につなげることも可能となります。
この記事では、うつ病が疑われる行動の変化にはどのようなものがあるのか、自分自身や周囲の人でそのような兆候があった場合どうしたらよいのか等、お話していきます。
目次
- 家族・恋人・友人・同僚等の行動や顔つきがうつ病かもと感じたら
- おわりに
うつ病の主な症状には、気分の落ち込み、人や物事への興味や意欲の減退があります。それが下記のような行動として表れることがあります。
・外出の頻度や人と話すことが少なくなる
休日はよく出かけたりしていた人でもあまり出かけなくなる、人と会ったり話したりすることを億劫がるようになる等、他者や外界とかかわる活動性が低下することは、うつ病の人にはよくある変化です。
・以前は好きだったことへの興味が薄れる
趣味や好きなものに関する情報をあまり追わなくなる、新聞やテレビなどを意欲的に見なくなるなど、好きだったことに興味がなくなったように見えたり以前のように楽しまなくなることもしばしばあります。
・身だしなみに気を配れなくなる
また、お風呂に入る頻度が減る、衣服や髪が以前ほど整っていない、部屋が散らかるなど、身だしなみや衛生面での気配りをしなくなる変化もあります。
・仕事や学業でのミスや遅刻・休みなどが増える
仕事や学業において、以前はしなかったようなミスが増えたり、遅刻や欠席しがちになったりすることも、うつ病の人には珍しくありません。
・食欲や睡眠など生活習慣や体調も変化し得る
食欲がなくなる、夜あまり眠れていない様子が見られる、朝起きてこなくなるなど、生活習慣が変化することもよくあります。
また、頭痛や腹痛、吐き気など体調面での不調が出てくる場合もあります。
うつ病では、行動面以外にも、発言の変化が見受けられることがあります。そもそも口数が減ることが多いのですが、少ない発言の中でも下記のような内容を口にする場合があります。
・極端な考えを口にする
視野が狭まり、物事や自分自身の否定的な部分にばかり目が向いてしまうため、「本当はこうあらねばならないのに、そうではない自分はダメだ」「絶望だ」「もう良いことなんて絶対起こらない」等、極端な考えを口にしたりします。
・自己否定的なことを言う
「みんなはもっと頑張っているのに、私より辛い人だっているのに、頑張れない自分は最低だ」「自分には何もできない」といったような、非現実的とも言える自分を否定するような言葉を発することもあります。
・希死念慮を言葉にする
希死念慮を抱くこともうつ病の主要な症状のひとつです。「死にたい」「消えたい」「いなくなりたい」など、自分の存在をこの世から消したい気持ちをそれらの言葉で表現することがあります。
うつ病の人の表情の変化には、どのようなものが挙げられるのでしょうか。
・無表情になる
うつ病の人に起こり得る表情の変化は、無表情になる、顔から生気がなくなったように見える等です。
楽しさや喜びなどを感じにくくなり、意欲がなくなりがちである症状が、そのまま表情に出るようになるのです。
・無理して表情を作っているように見える
一方で、もっと頑張らなくてはならない、周囲に心配をかける自分が嫌いという思いから、無理に笑顔を作ろうとしたりすることもあり得ます。
カウンセリングを通じて、自分自身とじっくり向き合ってみませんか?
うららか相談室では、臨床心理士などの専門家があなたの悩みや辛い気持ちをしっかりと聞き、心のサポートをさせていただきます。
ここからは、うつ病の場合の行動パターンをどう改善していけるのか、その方法について考えます。
・ひとつの行動変化だけでは分からない
ここまでうつ病の人にありがちな行動や表情などの変化をお伝えしてきましたが、どれかひとつの変化が見られたからといって、うつ病と決めつけることはできません。全体的に活動性が低下したり自己否定的な考えに陥ったりすることは、うつ病の人によく見られる変化ですが、うつ病ではなくても一時的にそのような言動をすることは誰にでもあり得ます。
うつ病かどうかは医師のみが診断できることですので、安易にうつ病だと決めつけず、心配ならば受診や専門機関への相談等を検討することをおすすめします。
・通院やカウンセリング
うつ病は自己判断で対処したり、治療を中断したりすると予後が悪くなることがあります。医師の指示にしたがって服薬や通院、カウンセリングなどを続けることが大切です。
・ゆっくり休養をとる
うつ病だと診断を受けたら、まずはゆっくり休むことが大切です。医師と相談のうえ、必要ならば仕事や学校を休み、自宅で心身にたまった疲れを取るべく、できるだけゆっくり過ごしましょう。
・生活習慣を整える
充分な休養を取ったら、少しずつ生活習慣を整えていきましょう。しんどいときは朝起きづらいものですが、できるだけ早めに起きて太陽の光を浴び、一日三食たべる、軽い運動をする等、活動性を高めていくことがうつ病の回復につながります。
・考え方の癖を理解して修正する
うつ病にはいろんな原因がありますが、自分を必要以上に追い込んでしまう考え方や行動の癖も一因になっていると思われる場合は、その癖を理解して、より楽な考え方に修正していくのも大切なことです。
しんどくなる時の自分のパターンを紙などに書き起こしてみるなど、自分でできそうならばそれでもいいですし、一人では難しいと感じたら、医師やカウンセラーとともに認知行動療法などを試してみるのも良いでしょう。
上記のうつ病の人の変化が最近の自分にも当てはまるように思えたら、どうしたらいいのでしょうか。
・意識的に休む
気持ちが落ち込んだりミスが増えたりすると、「これではダメだ」「もっと頑張らないと」と思ってしまいがちですが、そこを「いつもと違うのは疲れがたまっているからかもしれない」という方向に考え、心身が疲れていることを自覚して、自分でブレーキをかけることができれば最善です。早めに休養を取るようにすれば、その分回復も早まります。
・周囲の人の力を借りる
自分がいつもの自分ではないと気づけたのはとても大切なことですが、ではどうしたらいいのかと考えても分からずますます苦しくなることや、望ましい対応は頭では分かっていても思うようにいかないことも多いかと思います。
そんなときは、思い切って家族や友人、同僚など周囲の人に相談すると良いでしょう。自分自身の状態や状況を伝えて話を聞いてもらったり、必要なら仕事や家事、生活スケジュールの調整をお願いするのも一手段です。
・受診を検討する
気分の落ち込みや体調不良が2週間以上続いたら、心療内科の受診も視野に入れると良いです。敷居が高く感じる人もいるかもしれませんが、早期対応がより早く元の自分に戻れる可能性を高めます。
では次に、家族や恋人、友人など周囲の人の様子がいつもと違う、うつ病かもしれないと感じたときは、どう対応するとよいのか見ていきましょう。
・無理に活動させようとしない
元気がなくなって無気力な様子を見ると、とても心配になるでしょうし、元気づけようと遊びや食事に誘ったり、明るい話題を持ち出したりしたくなることもあるかと思います。しかし、傍から見てうつ病を疑うような変化が認められるということは、本人はとても疲弊している可能性が高く、そのようなときは遊びや明るい会話ができるような余力がないことも多々あります。
無理して付き合わせてさらに疲れさせてしまったり、誘いを断ることへの罪悪感を抱かせてしまったりするおそれもあるので、本人の主体的な行動以外には外出や人との関わりを増やそうとはしない方が良いでしょう。
・過度な一般化や否定はせず話を聞く
相手の話を聞くことはとても大切な対応です。相手の方から話し始めたら、あるいは聞いてほしそうな素振りが見えたら、ゆっくり耳を傾けることができるといいですね。
自分を否定するような話や絶望感などを口にされることも多いと思われますが、「みんなそんなもんだよ」「うつ病じゃない?」等、過度な一般化はしないようにして、相手の言葉を否定せず受け止めると良いでしょう。
・支えになる用意はあることを伝えて見守る
こちらからはあまりアドバイスや介入などはしない方が良いことも多いですが、相手が誰かの助けが必要だと感じたときにその機会を逃さず、相手の気持ちに沿った対応ができるといいですよね。
してほしいことがあれば支えになる用意があること、いつでもどんなことでも言ってほしいことを伝えておき、あとは見守るスタンスでいるのも最善の対応のひとつかと思います。
うつ病は身近でよく知られている病気で、多くのケースで意欲の減退や体調不良が見られますが、それらの変化があったからといって必ずしもうつ病というわけではありません。
うつ病でもそうでなくても、周囲の人ができる基本的な対応はそれほど変わりません。いつもと違う行動や生活の変化が見られたら、できる対処をしながらしばらく経過を見て、続くようなら受診を考えましょう。