近年は、家族やキャリアの在り方の多様性のみならず性の多様性についても公で謡われる時代になってきました。みなさんは、ご自身の性について自問をしたことがあったり、性的指向について疑問に思ったことはありますか?もし、そうであれば、まずは多様な性的指向や性自認を知り、理解することから始めてみましょう。
目次
- LGBTとは
- おわりに
LGBTとは、女性同性愛者(Lesbian:レズビアン)、男性同性愛者(Gay:ゲイ)、男女を問わない両性愛者(Bisexual:バイセクシュアル)、出生時に判断された性別が自身の性自認と異なるトランスジェンダー(Transgender)の各英単語の頭文字を組み合わせた性的指向・性自認を表現した用語で、セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の一部の人々を指した総称です。
※性的指向とは、恋愛・性愛がどのような対象に向かうかを表す概念のことで、性自認とは、自分の性をどのように認識しているかを表す概念のことです。
LGBTは、全てのセクシュアル・マイノリティー(性的少数者)を指す用語ではありません。同性、異性にも性的欲望を持たない方(Asexual:アセクシュアル)、男女区別が身体的につきづらい方(Intersex:インターセックス)、自己により性自認、性的指向の確信が難しい、または意図的に決めていない方(Questioning:クエスショニング)など、LGBT以外のセクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の人々もいます。このため、上記のセクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の人々を表現する英単語の頭文字がLGBTという用語に加えられ、LGBTQIA+といった呼び方が使われることもあります。
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カミングアウトとは、女性同性愛者(Lesbianレズビアン)、男性同性愛者(Gayゲイ)、両性愛者(Bisexualバイセクシュアル)、トランスジェンダー(Transgender)などセクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の人々が、自身のアイデンティティについて気づき、それを自己受容し、他者へ開示していく、つまり、他の人と共有することを決定する際に使用する用語です。
また、アウティングとは、セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の人々の性的指向や性自認を、本人の同意なしに他者が、他の誰かに秘密を開示し暴露する行為のことを示す用語です。
自分の性に確信が持てないとき、それを判断したいとき、病院で診断してもらえるのではないかと考える方も少なくないのではと思います。しかし、目に見える傷や病気とは異なるため、今のところ、医学的基準が設定されている「性同一性障害(※)」かどうかの診断しか受けられません。レズビアンやゲイ、バイセクシャルといった、性的指向についての診断等はありません。
日本精神神経学会の性同一性障害に関する委員会が策定している、性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第 4 版改) によると、性同一性障害は、性別に関する違和感の実態を明らかにしていくプロセスで、診断していくとされています。
例えば下記のような診断項目があります。
また、本人の意思だけでなく、ホルモン検査や内性器・外性器の診察ならびに検査など、身体的側面からの性別の判定も行われます。
上記の事から、自分の性に疑問・違和感を持ったら目を逸らしたり、自己嫌悪に陥ったりするのではなく、ご自身の本当の想い、気持ちと向かい合うことから始めてみることが大切です。疑問や違和感は、ご自身も、ご自身のことが理解できかねる段階であるため、引き起こされる感覚であるはずです。ですので、幼少期から現在までを振り返り、ご自身の行動や言動、気持ちはどのような性としての考え方があったのかなどを考えてみることから始めてみるのもよいかもしれません。そのうえで、医師のもと診断をしてもらうことも、また一歩、ご自身の性的指向や性自認を知る機会になると思いますので、検討していきましょう。
また、うららか相談室におけるカウンセリングで、心理学や福祉の専門家とともに、ご自身の性的指向や性自認について整理したり将来について考えていくことも可能ですので、お一人で悩まず、まずはお気軽にお声かけください。
オンラインカウンセリングのうららか相談室では、秘密の厳守を固くお約束いたします。
匿名でご利用いただけるため家族や友人に知られることなく、安心して悩みを相談することが可能です。
カミングアウトをするという決意はとても勇気のいることである場合が多いです。
カミングアウトをする際に多くの方が直面している現実的な問題は、セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の方々への差別や偏見を恐れていることであることが多くあります。しかし、性への自問をすることは特別なことではなく、みなさんはお一人ではありません。信頼できる友人や家族に話してみることで、ご自身への理解を深めることにつながることもあります。
お一人で、どの性別に当てはまるのかを確認し、どれにも当てはまらないと思った時には、1つのラベルを無理に決める必要もありません。いまと将来の感じ方が変わる方も多くおられます。
このようなことから、性的指向や性自認に違和感がある状態をまずはご自身で受容していくこと、そして、疑問や違和感があり判断がつかない状況への不安感や悩みを信頼できる人たちや専門家へ共有していくことも大切です。実際にカミングアウトした人のほとんどは、そのあと、家族や友人から前向きで協力的な反応を得て、カミングアウトの決断に満足を感じる方が多くおられるようです。
カミングアウトの仕方、シチュエーション、時期や年齢は、人により様々で一概にこうあるべきというものがあるわけではありません。家族だけにカミングアウトする方、職場も含め関わる全ての人にカミングアウトする方もいます。まずは、ご自身がどのような自分になることを望み、どのようなことや環境を周りに求めているのかを明らかにしていくことが大切なのではないかと思います。
カミングアウトのプロセスとしては、3ステップあると考えられます。
第一段階としては、「気づき」です。これは、ご自身がセクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の可能性があるかどうかを疑問視し始めるところです。
第二段階としては、ご自身がセクシュアル・マイノリティー(性的少数者)であることを受け入れ始めるときです。
第三段階としては、セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)としての自己、アイデンティティを自ら表現し、人生を送ることに慣れ始めたときです。
一部の人々は、人の外見や言動、行動など、表面的なところからセクシュアル・マイノリティー(性的少数者)であるかどうか判断できると考えていることがあります。しかし、本人でない限り、他人は人の性的指向を批判したり、決めつけたりすることはできないはずです。ですので、カミングアウトを検討される場合は、あなた自身がどのように感じているかという内面の部分を大切にしていきましょう。誰もが自分の性的指向やアイデンティティを明確にしているわけではありませんので、自分の性に疑問・違和感を持ったらそれは一般的にあることであり、1人ではないことを知りましょう。ご自身のありのままの姿を尊重した考えのもと、誰に話したいのか、何を伝えたいのかを考えていきましょう。あなた自身があなたにとってベストな伝え方を知っているのです。
そうはいっても難しいという場合は、カミングアウトのヒントをいくつか書きますので参考にしていただければと思います。
〇カミングアウトを決めたら、ご自身の中でどのようにカミングアウトをするか、何をどう伝えるか考える時間を設けましょう。
〇誰に伝えたいのか、伝えるべきなのかを考えていきます。
〇伝えたい人たちに、セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)への知識がない場合に備えて、あなた自身も上手く説明できるよう、インターネットや本などを参考に情報収集します。
〇手紙で伝えるのか、メールで伝えるのか、直接会って話すのか、ご自身にとって伝えやすい方法、相手に伝わりやすい方法も考えていくといいでしょう。
これらでカミングアウトの準備をして、カミングアウトを終えたら、すぐに相手が理解し、受容してくれる場合もあればそうでない場合もあるかもしれません。すぐに理解されようと思わずに、伝えた相手にもゆっくりと考える時間を与えていくのがよいでしょう。時間とともに伝えた相手もその内容をより深く理解していくのではないかと思います。
驚かれるだろうか、どう見られるだろうかなどカミングアウトした後も心配になるかもしれませんが、誰もが否定したりするわけではありません。
うららか相談室におけるカウンセリングをとおして、心理学や福祉の専門家とともにカミングアウトに向けた準備をしていくというのも1つの選択肢として考えていただければ幸いです。また、カミングアウト後に、家族や友人、職場の方々との関係性が変化したと感じておられる方、なかなか理解してもらえず辛さを感じておられる方もお一人で悩まず、お気軽にお声かけください。
もしも、カミングアウトをされたら、その人の立場から世界を見る努力をしてみましょう。あなた自身がすごく悩んでいたり、公にすることに悩んだりしていることがあるとき、どういう思いを抱えるだろうかと想像してみるのもよいかもしれません。そうすると、相手へどういう反応をしたらよいのかを考えることがしやすくなります。カミングアウトをされたら、これまでテレビや人から聞いたことなどを参照して、ご自身で相手にステレオタイプにあたるような先入観を持ってジャッジしてしまうかもしれません。しかし、人の性格や気質もそれぞれ異なっているので、「セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の人=こういう人」というレッテルを貼ることはできないはずです。ですので、カミングアウトをされたら、まずは、その人自身の姿を見るように意識し、勇気をもってカミングアウトしてくれたこと、カミングアウトする相手にご自身が選ばれていることを忘れずにしていかれることが、相手を受け入れ、相手を尊重する意思表示になるのではないかと思います。
私の住むオランダでは、性的指向に関して日本よりもオープンだと感じます。一般人が出演する、毎週放送されるお見合い番組でも、異性愛者のみならずセクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の人々は毎度出演していますし、街を歩いていても、セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の人々も堂々と恋人と愛情表現をしていたりします。また、私が通っていた語学学校の友達は、初回のクラスでクラスメンバーにカミングアウトをしていましたが、特別驚くわけでもなく、自然な流れでお互いの恋愛やプライベートの話もしていました。また、オランダのアムステルダムなど主要都市では毎年、日本と同様に、「ゲイ プライド」という大きなフェスティバル&パレードが催され、私も友人と足を運んでいます。そこには老若男女、セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)かそうでないかは問わず、人々が足を運びます。このように、海外では、性的指向もオープンにしていくような風潮がより高まっているように感じます。
セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)に限らず、人はみな、それぞれ他者との違いを持っていたり、個性があるものです。ありのままの自分でいられることは、なにより自分自身が心地よいですし、生きやすい環境なのではないかと思いまます。ですので、ご自身の本当の気持ち、本音を大切に尊重していただければと思います。
※性同一性障害について
2022年~、性同一性障害はWHOの精神疾患の分類から外れることになります。また、「性別不合」として、障害と診断されなくても、当事者が望めば性別適合手術などの医療行為を受ける権利が保障されるべきとされています。国内での変化については、まだ明らかになっておりません。
また、トランスジェンダーは障害ではなく個性だという理解により、性同一性障害という言葉はあまり日常的に用いられることはないのですが、医学的な診断名としては現在も用いられています。
性同一性障害という診断が現在も残っている理由として、医療行為にはリスクや責任を伴い、例えば、なんとなくホルモン投与をしてほしいといった場合など、いくら当事者が繰り返し訴えても、そのリスク・責任に足る理由が無ければ、医療行為は行えないから、といったことが挙げられます。
つまり現在、性同一性障害という言葉は、医療者が手術などの医療行為の妥当性を検討するための診断基準として役割を果たしているということになります。また、今後は性別不合や性別違和といった名称が適応される可能性があります。
<参考文献>
Sexual Orientation|https://www.plannedparenthood.org/learn/sexual-orientation
性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第 4 版改) 日本精神神経学会 性同一性障害に関する委員会|https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/gid_guideline_no4_20180120.pdf
What is LGBT|https://lgbt.ie/what-is-lgbt/