現在、企業や組織にとって、働く人の心の健康を守ることが大きな課題となっています。ストレスチェック制度は、働く人のメンタル不調の未然防止を目的として、2015年から開始されました。これまで、従業員が50人以上の事業場を対象としていましたが、2025年5月の労働安全衛生法の改正により、50人未満の事業場も対象となることが決まりました。
この記事では、ストレスチェック義務化への具体的な対応方法についてご紹介していきます。
目次
- 50人未満の事業場のストレスチェックを実施しない場合のリスク・罰則
- おわりに
2025年5月の労働安全衛生法の改正により、50人未満の事業場でストレスチェックの義務化が決定されました。実際にストレスチェック実施が義務化となるのは、2028年4月1日からです。最新情報については、厚生労働省のサイトなどで確認するようにしましょう。
ストレスチェックは、労働者が自身のストレス状態に気づき、セルフケアに取り組むきっかけをつくることや、職場環境の改善に活用することにより、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的としています。「仕事のストレス要因」や「ストレス反応」など仕事のストレスに関する質問に回答することで、現在抱えているストレスの状況を把握することが可能になります。
ストレスチェック制度は2015年に開始されて以来、50名以上の事業場で実施が義務化されてきました。50名未満の中・小規模の企業においても、働く人のストレス状況を把握し、メンタル不調を未然に防ぐことができるよう、職場で対策を行うことが期待されています。
うららか相談室では、企業・団体向けにストレスチェックサービスをご提供しています。
「何から準備すればよいかわからない」「自社に合った実施方法を相談したい」といった場合も、導入から実施まで丁寧にサポートします。
ストレスチェックを行うことで、次のようなメリットがあります。
①働く人のメンタル不調の未然防止
ストレスチェックによって、高いストレス状態に早期に気づくことで、精神疾患などのメンタルヘルス不調に至る前に、対処することが可能になります。ストレスチェックでは「高ストレス者」と判定された方に対して、自身のストレス状態や医師による面接指導の必要性などを通知します。
うつ病などの精神疾患は、症状が悪化している状態だと、回復まで数カ月~数年かかる場合も少なくありません。そこで、高ストレス者など、ストレスチェックでリスクが高い方を対象に、産業医面談等を行い、メンタル不調を予防することは、ストレスチェックの重要なメリットの一つです。
②職場の生産性の向上
ストレスチェックを1年に1度行うことは、一人一人が自分のストレスについて振り返る機会になります。また、自分のストレスチェック結果を確認することで、ストレスの傾向や、必要なセルフケアについて考えることも可能です。ストレスチェックを活用して、働く人が自分自身の心の健康を保つことで、職場全体の生産性向上も期待できます。
③職場の環境改善
ストレスチェック実施後には、集団分析を行うとより効果的です。企業・組織全体の傾向や、部署ごとの状況を把握することで、よりよい職場環境のための対策について考えることができます。特に「仕事の量」や「仕事の裁量度」、「上司とのコミュニケーション」など、業務全般に関わる具体的な内容を測定することで、その職場の強みや弱みの分析も可能です。
④コンプライアンス強化
50人未満の事業場にとって、ストレスチェックの実施は、法的な義務を果たすだけでなく、企業のコンプライアンス強化に直結します。企業や組織には、働く人のこころと身体の健康を守る「安全配慮義務」が課せられています。定期的なストレスチェックの実施により、働く人のストレス状況を把握し、メンタル不調を未然に防止することは、企業としての安全配慮義務を果たすための取り組みの一つといえます。
では、ストレスチェックを実施しない場合のリスクや罰則について説明します。
①コンプライアンス違反
ストレスチェックを実施しない場合や、実施後の適切な措置を行わなかった場合、企業は安全配慮義務違反に問われる可能性があります。
②罰則と行政指導
現在の労働安全衛生法では、50人以上の企業がストレスチェック実施後に、労働基準監督署への実施状況の報告を怠った場合には、罰則が定められています。2028年4月以降、50人未満の企業でもこの法律が適用される場合は、報告を怠ることで罰則の対象となる可能性があります。
③職場の生産性低下
健康問題による仕事の欠勤のことを「アブセンティーズム」、出勤している従業員の健康問題によるパフォーマンスの損失を「プレゼンティーズム」と言いますが、厚生労働省の資料では、一部の企業・組織を対象とした推計において、健康関連総コストの77.9%をプレゼンティーズムが占めたと報告されています(厚生労働省「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」)。
ストレスチェックの実施を怠ることで、職場のストレス要因を把握し、プレゼンティーズムによる生産性の低下を防ぐ機会を失う可能性があります。そして結果的には、企業の利益にも影響する可能性があります。
国内最大のオンラインカウンセリング「うららか相談室」の法人向けサービスでは、50人未満の企業様向けに、ストレスチェックとカウンセリングを組み合わせたプランをご用意しています。
高ストレス者と判定された従業員の方のみを対象に、カウンセリングをご利用いただくことも可能です。
ここからは、基本的なストレスチェックの流れを説明します。詳細な部分については、厚生労働省のマニュアルなども参考にしてください。
①実施準備
ストレスチェック実施にあたり、下記のような準備が必要になります。
1)事業者による方針の表明
事業者からストレスチェックの目的や方針などについて、従業員に表明します。
2)関係労働者の意見の聴取
ストレスチェック制度の導入にあたって、従業員が安心してストレスチェックを受検できるように、実施体制や実施方法等について、関係労働者の意見を聴きます。
3)社内ルールの作成と周知
ストレスチェックに関する社内ルールを作成します。実施体制・実施方法、記録の保存、情報管理、情報の開示、苦情処理、不利益な取り扱いの防止などを含めましょう。作成したルールについては、事業場内で全ての従業員に確実に周知することが大切です。
②実施体制・実施方法の決定
ストレスチェックの実施準備ができたら、具体的なストレスチェックの実施体制・実施方法を決定します。
1)実施担当者の選任
ストレスチェック実施のためには企業と外部機関で下記のような実施体制が必要になります。厚生労働省のマニュアルでも、労働者のプライバシー保護の観点から、ストレスチェックの実施を外部機関に委託することが推奨されています。
実施体制の一例を紹介します。
・事業者(事業場のトップ):ストレスチェック制度の実施責任者。方針の決定・表明
・実務担当者(衛生管理者など):関係労働者の意見聴取、実施計画・実施管理、外部委託先との契約・連絡調整
・実施者(医師・保健師など):ストレスチェックの実施
・実務担当者(衛生推進者など):実施の補助、面接指導の申出の勧奨、個人結果の記録の保存
[図1]実施体制のイメージ
2)委託先の選定・契約
企業・組織の状況に合わせて委託先を選定します。委託先に関しては、以下の事項について把握しておくことが重要です。
・実施体制(実施者、実施事務従事者など)
・実施方法(調査票、調査方法、高ストレス者・面接指導対象者の選定方法、ストレスチェック結果の通知方法、面接指導対象者への通知方法など)
・料金体系(基本料金、オプション料金など)
・面接指導(面接指導の依頼先、面接指導担当医師、面接指導以外の相談対応など)
・情報管理(結果通知などの情報の流れ、結果の保存など)
3)医師の面接指導の依頼先の選定
面接指導が必要となった場合の依頼先について選定しておきます。労働者数50人未満の事業場における医師の面接指導は、最寄りの「地域産業保健センター」に依頼すると、無料で受けることができます。
また、ストレスチェックの委託先の外部機関が、医師の面接指導を提供していることがあります。
4)実施時期と対象者の決定
・ストレスチェック時期の設定の仕方
ストレスチェックは1年に1度の実施が義務になりますので、実施時期を決定する必要があります。企業によって、実施時期の設定方法は様々です。例えば下記のような例を参考にしてみてください。
(例1)繁忙期に設定し、労働者のストレス状態を把握する
毎年繁忙期が決まっているので、繁忙期付近でストレスチェックを実施する。高ストレス者には、必要に応じて医師による面接指導などのフォローにつなげる。
(例2)業務が落ち着いている時期に設定し、セルフケアに力を入れる
業務が落ち着いている時期にストレスチェックを実施する。実施後、セルフケア研修などを行い、セルフケアについて考える機会を設ける。
・ストレスチェック対象者の決定
ストレスチェックの対象者は「常時使用する労働者」とされており、一般定期健康診断の対象者と同様です。具体的な要件は厚生労働省のマニュアルなどで確認するようにしましょう。
③ストレスチェックの実施
ストレスチェックの実施にあたり、あらかじめ職場全体に実施の予告をしておく必要があります。その際には、実施時期や委託先の外部機関名、実施方法、受検勧奨の方法などを伝えておきましょう。
[図2]ストレスチェックの流れ
1)調査票の配布・回収・受検勧奨
紙で実施する場合は調査票の配布・回収を行います。WEBで実施する場合は実施用URLを共有し、受検者のトラブルがあれば対応できるようにします。
すべての従業員がストレスチェックを受けることが望ましいため、事業者は未受検者に対して受検勧奨を行うことが可能です。
※受検を強要することのないように留意する必要があります。
2)結果の通知
個人のストレスチェック結果について通知します。ストレスチェック結果は個人情報なので、基本的には実施者(委託先)から、他者に内容が分からない形で労働者本人に通知する必要があります。
また、面接指導対象者だけに職場で封書を配布すると、面接指導対象者であることが他の対象者から類推されてしまう可能性があるので、次のような配慮が必要となります。
・電子メールで通知する
・ストレスチェック結果の封書に、面接指導対象者である旨の通知文も同封する など
※面接指導の申出を行ったことや面接指導の結果は事業者に伝わることになります。面接指導対象者にはあらかじめその旨を通知しておくことが必要です。
3)ストレスチェック結果の保存
個人のストレスチェック結果は、法令上、従業員の同意なく事業者が提供を受けることはできません。そのため、本人が事業者への結果提供に同意していない場合、結果の保存は、委託先の外部機関の実施者または、実施事務従事者が行うことになります。ストレスチェック結果は、外部機関の保管場所やサーバ内で保管することが多いです。ストレスチェック結果の記録は、5年間保存する必要があります。
④医師の面接指導および事後措置
1)面接指導の申出
事業者は、面接指導の対象となる労働者から申出があった場合、医師による面接指導を実施する必要があります。
面接指導を実施する日時は、基本的には、就業時間内に設定することが望ましいです。その際には、対象者が心理的な負担なく受けられる配慮が必要です。就業時間内に面接指導を受ける際には、上司などに面接指導を受ける理由まで伝える必要はありません。一方で、業務時間中に面接を受けやすい環境を整えるためにも、上司や管理者が制度について理解しておくことが重要です。
2)面接指導の実施
事業者は、面接指導を担当する医師に、面接指導に必要な情報を提供します。例えば以下のような情報です。
①対象者の氏名、性別、年齢、所属する事業場名、部署、役職など
②個人のストレスチェック結果(ストレスプロフィール等)
③ストレスチェックを実施する直前1か月間の、労働時間、労働日数、深夜業の回数・時間数、業務内容など
④定期健康診断やその他の健康診断の結果
⑤ストレスチェックの実施時期が繁忙期であったかどうかの情報 など
3)医師からの意見聴取
事業者は、面接指導結果に基づき、就業上の措置の必要性の有無や必要な措置の内容について、医師から意見を聴取します。医師からの意見内容としては下記のようなものがあります。
・メンタル不調の未然防止のための労働時間の短縮
・療養を目的とした休業 など
4)就業上の措置
事業者は、医師の意見聴取の結果をもとに、必要があると認められる場合は、その従業員の実情を考慮して、対応可能な就業上の措置をとります。職場環境の改善に関する意見は、人事労務管理に関わるものが多いため、人事労務担当者や管理監督者とも連携して対応しましょう。
5)面接指導以外の相談対応
事業者は、医師による面接指導の申出窓口だけでなく、その他の相談窓口についても、従業員に情報提供することが望ましいです。面接指導を受けることを選択しなかった労働者も、高ストレスの状態で放置されることがないように、高ストレスであるとされた労働者には、以下のような窓口を案内しましょう。
・厚生労働省「こころの耳」の無料相談窓口(電話・SNS・メール)
・ストレスチェック委託先が提供するカウンセリング窓口
・自社が契約しているカウンセリング窓口 など
うららか相談室では、高ストレス者が医師の面接指導以外の相談を希望した場合のカウンセリングにも対応しています。
6)面接指導結果の記録と保存
事業者は、面接指導結果の記録を5年間保存する必要があります。
⑤集団分析・職場環境改善
1)集団ごとの集計・分析(集団分析)
ストレスチェックを実施したら、個人のストレスチェック結果を集団ごとに集計・分析するようにしましょう。多くのストレスチェック実施機関では、集団分析に対応しています。ストレスチェックを「実施しただけ」にならないように、有効活用しましょう。
2)職場環境改善
ストレスチェックの集団分析結果が出たら、職場環境改善のために活用しましょう。部署ごとに結果を比較することで、組織全体の課題が見つかることもあります。集団分析結果をもとに、ラインケア研修を行うことも有効です。うららか相談室では、集団分析の活用方法について、企業の実態に合わせて提案させていただくことが可能です。職場面談やラインケア研修、セルフケア研修にも対応しています。
活用方法についてはコラム「ストレスチェックの効果的な活用方法」に詳しく記載していますので、参考にしてください。
2028年の50人未満のストレスチェック実施義務化に向けて、小規模事業場においても、実施体制の構築が必要となります。今から最新の行政からの通達や厚生労働省の最新情報を参照し、余裕をもって実施体制を準備していきましょう。「まず何から取り組んだら良いか分からない」というご担当者様は、まずはストレスチェック実施機関に相談してみることがおすすめです。
うららか相談室では、50人未満の企業様向けに、ストレスチェックとカウンセリングがセットになったプランもご用意しています。お気軽にお問い合わせください。