ストレスチェック制度は2015年に義務化され、導入から10年が経過しました。現在、多くの企業でストレスチェックが実施されていますが、義務化の対応にとどまり、十分に活用できていない企業や組織も少なくありません。この記事では、ストレスチェックの具体的な活用方法についてご紹介していきます。
目次
- おわりに
ストレスチェックとは、働く人がストレスに関する調査票に回答することで、本人のメンタルヘルス状態を把握するための取り組みです。
厚生労働省では、標準的な調査票として「57項目版(職業性ストレス簡易調査票)」が示されています。この57項目には、「職場の心理的な負担の要因」「心身の自覚症状」「職場のサポート」に関する内容が含まれています。さらに、これに加えてワークエンゲージメントや職場環境についての内容が追加された「80項目版」もあり、より詳しく分析することができます。現在、様々なストレスチェックサービスが提供されていますが、厚生労働省の調査票を基本としているものが多いです。
ストレスチェックは2015年に労働安全衛生法が改正されたことで、従業員50人以上の事業所で1年に1回以上の実施が義務化されました。
また、2025年に労働安全衛生法が改正され、これまで努力義務とされていた50人未満の事業所でも、2028年4月1日からストレスチェックの実施が義務化されることが決定しています。中小企業もストレスチェック実施義務化の対象となることで、ストレスチェックを実施する企業は大きく増えると考えられます。
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・ストレスチェックで高ストレス者と判定された従業員に限定してのカウンセリングも可能
ストレスチェック制度の問題点として、「実施は義務化されているが、本質的な意味がない」という意見を耳にすることがあります。その理由としては、以下の内容が挙げられます。
1.正直な回答をしづらいから
ストレスチェックの結果は個人情報です。ストレスチェックを受ける方にとって、「企業にストレスチェック結果を知られてしまうのではないか」「結果が悪かったら業績に響いてしまうのではないか」という不安を抱いてしまい、正直な回答をできなくなっている可能性が考えられます。
原則として、ストレスチェックの実施には、人事権を持つ方は直接関わることができません。このため、ストレスチェック結果によって、不利益な取り扱いに利用されることはありません。
2.実施率が上がらないから
企業にとって、ストレスチェックの実施が義務付けられていても、一人ひとりの実施を強制することはできません。そのため、ストレスチェックの実施率が低い場合は、組織全体の状況が把握できず、偏ったデータになってしまったり、そもそも人数不足で分析ができない場合も考えられます。
3.一人一人が「受けただけ」になっているから
ストレスチェックは、定期的に自分自身のストレス状態を確認する機会として有効です。実施後は一人ひとりが自分の結果を振り返ることで、今後のセルフケアに生かすことも可能です。
しかし、ストレスチェックの結果の見方やセルフケアへの活用方法についての知識がないと、「受けただけ」になってしまうことが多いです。
4.組織全体で「実施しただけ」になっているから
ストレスチェック実施後は集団分析といって、会社全体や部署ごとなど、組織全体のデータを分析することが有効です。令和6年の厚生労働省の調査では、ストレスチェックを実施した企業や組織のうち、集団分析を行ったのは75.4%でした。そのうち、分析結果を活用した企業や組織は76.8%にとどまっています※1。
せっかくコストをかけてストレスチェックを実施しても、結果の分析をしなければ、「実施しただけ」になってしまい、データが無駄になってしまいます。
5.高ストレス者への対応が不十分だから
ストレスチェックにおける「高ストレス者」は、メンタル不調のリスクを検討する指標であり、精神疾患の有無を判定するものではありません。そのため、ストレスチェックを受けた方の中には、一定数の方が高ストレス者に該当することになります。ご自身が高ストレス者と判定された場合は、心身の状態を振り返り、一度産業医面談を受けてアドバイスをもらうことも大切です。
組織によって、高ストレス者の方が産業医面談を申し込む方法や手順は様々です。産業医面談へのハードルが高いと、ストレスチェックでメンタル不調のリスクを把握できても、未然防止ができない可能性があります。
ストレスチェックは、うつ病などのメンタル不調や精神疾患を予防することを目的としています。ストレスチェックの検査項目は、アメリカ国立労働安全衛生研究所のストレスモデルを元に作成されています。[図1]のように、「仕事のストレス要因」が「個人要因」「仕事外の要因」「緩衝要因」から影響を受けて、「急性ストレス反応」になるというプロセスを想定しています。
[図1]アメリカ国立労働安全衛生研究所 ストレスモデル
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・離職リスクの改善、生産性やモチベーション向上にも効果的
・産業医と連携することも可能
では、ストレスチェックを有効に活用するためにはどうしたら良いのでしょうか。下記に具体的な活用方法を挙げましたので、参考にしてみてください。
1.結果の取り扱いや目的について、十分に説明する
ストレスチェックの結果の取り扱いについて十分に説明することで、ストレスチェックを安心して受けることができ、正直な回答を促すことができます。また、ストレスチェックの目的がメンタル不調の予防であり、個人の業績に影響することがない旨を説明することも大切です。
2.未実施者へのリマインドを行う
実施率を向上させることで、一人一人のセルフケアに役立つ上に、組織全体での正確な分析も可能になります。実施率向上のためには、ストレスチェック開始日から1週間後や、実施終了日前日など、複数回のリマインドが有効です。
ストレスチェックサービスによっては、メール等でリマインドする機能がある場合もありますので、活用するようにしましょう。
3.セルフケア研修を行う
一人ひとりがストレスチェックを「受けただけ」にならないように、ストレスチェック実施後に、ストレスチェック結果の見方や、セルフケアへの活用方法について、研修で学ぶことも大切です。
うららか相談室では、ストレスチェックを活用したセルフケア研修も対応していますので、お気軽にお問い合わせください。
4.集団分析を作成する
ストレスチェックを実施した際は、できるだけ集団分析を作成するようにしましょう。組織の状況に合わせて、下記のような単位で分析することも有効です。
・部署(営業部、人事課など)※複数の階層に分けるのも効果的
・事業所(本社、九州事業所など)
・役職(部長、課長、マネージャー、リーダーなど)
・年代(20代、30代など)
・入社年数(3年以内、3~5年以内、10年以上など)
5.職場面談を行う
集団分析の中で、リスクが高い職場については、管理職と面談を行い、状況をヒアリングすることも有効です。例えば、「総合健康リスクが120を超える職場」など、社内で基準を決め、職場のメンタル不調予防のための対策を組織全体で考えることが大切です。
ただし、リスクが高い職場への面談は、管理職を評価したり責めたりするのではなく、より良い対応を考える場にすることが必要です。
うららか相談室では、ストレスチェックを活用した職場面談にも対応しています。外部の心理の専門家が助言することで、客観的に解決策を考えることも可能です。
6.高ストレス者への対応を充実させる
高ストレス者へのメンタル不調の予防策として、以下のような対応も有効です。
・産業医面談へのハードルを下げる
高ストレス者が産業医面談を申込みやすいよう、プライバシーに配慮した申し込み方法にしたり、産業医面談の申込みをしていない方にリマインドしたりすることも有効です。
・カウンセラーや保健師との面談の選択肢を設ける
高ストレス者の方の中には、「医師に相談するほどではないが、ちょっとした不安を相談したい」と考える方もいます。産業医面談を希望しない方に対しても、カウンセラーや保健師などと面談できる選択肢を用意することも効果的です。
ここまで、ストレスチェックの活用方法について、具体的に説明してきました。企業や組織にとって、ストレスチェックの実施は金銭的にも時間的にもコストがかかるものです。ストレスチェックを積極的に活用し、組織全体のメンタルヘルスに活かしてみてください。
※1(厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」)