仕事は生活の糧であり、生きがいにもなり得る大切なものですが、一方で、「仕事のことを考えると気が重い」「行きたくない」と感じたことがある人も多々いることと思います。むしろ、そう感じたことのない社会人の方が、きっと少ないことでしょう。
この記事では、仕事に行きたくなくなる原因や、そうなった時の対処法などについて考えていきます。仕事に対してしんどさを感じている人の参考になれば幸いです。
目次
- おわりに
仕事に行きたくないとき、そんな自分を社会人として甘えているのではないかと否定的に感じてしまう人もいるかもしれませんが、実際のところ、仕事へのストレスを抱えている人はたくさんいます。
・8割以上の人が仕事にストレスを感じている
厚生労働省の「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、82.7%もの労働者が、仕事に関して、強い不安、悩み、ストレスになっていると感じる事柄があると回答しました。
働いている人の8割以上の人が仕事に悩み、ストレスを抱えていることが浮き彫りになる結果で、仕事に行きたくないと思うことは何もおかしなことではないと言えます。
・20歳以上のすべての年代の多くが仕事に悩んでいる
この調査で仕事にストレスがあると答えた人の割合を年代別に見てみると、以下のようになります。
☑20歳未満:21.1%
☑20~29歳:72.0%
☑30~39歳:86.0%
☑40~49歳:87.9%
☑50~59歳:86.2%
☑60歳以上:64.8%
「20歳未満」「60歳以上」以外のすべての年代で7割以上、60歳以上も約65%もの人が、仕事のことで悩んでいるようで、働く日本人のメンタルヘルスがとても大きな課題になっていることが分かります。
・仕事に行きたくないと感じるのは自然なこと
この他にも、様々な民間企業が仕事に関するアンケート調査を行い、そこでもやはり多くの回答者が、仕事をしたくない、行きたくないと感じたことがあるとの結果が見られます。
これほど多くの人が仕事へのストレスを感じていることもあり、仕事に行きたくないのは個人的な甘えや弱さのみから出てくる悩みではなく、真面目に仕事に取り組んでいれば誰もが感じ得る自然な感覚だと言えるでしょう。
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仕事に行きたくないと感じたことがある人はとても多いことが分かりましたが、その理由や原因はどんなことなのでしょうか。
・仕事の失敗や量、人間関係などが主なストレス要因
先述の厚生労働省の調査では、強い不安、悩み、ストレスの内容として以下のような理由が挙げられています。
☑仕事の失敗、責任の発生等:39.7%
☑仕事の量:39.4%
☑対人関係(パワハラ・セクハラを含む):29.6%
☑仕事の質:27.3%
☑顧客、取引先等からのクレーム:26.6%
年代別に見ると順位に差はありますが、全体で見ると多いものから順に、仕事の失敗や量、対人関係などをストレス要因に挙げる人が多い結果となりました。
・実際は人間関係などが原因になることも多いと考えられる
仕事の失敗や責任の発生は確かにとても大きなストレス源で、一時的に仕事に行くのが辛くなってしまうようなことですが、ひとつ失敗をしてしまっても周囲がサポートしてくれるなど望ましい職場環境があれば、かえってその後の仕事に活かせる経験にもなり得ます。
しかし、ミスを責められたり、過度に責任を押し付けられたりするような職場だと、辛い状況が続いてしまいます。これは「人間関係」や「仕事の量」の問題とも言えるのではないでしょうか。
仕事に行きたくない状態がある程度長く続く場合、実際は人間関係や仕事の量や質が理由になることも多いと推察されます。
たとえば、上司に厳しく叱責される、職場内にセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントにも該当し得る不快で不適切な内容の言動がある、同僚と気軽に話せる雰囲気がなく仕事の相談もしづらい等、人間関係やハラスメントが仕事に行きたくない理由の大きなウェイトを占めるとも考えられます。
・職場環境の問題
また、仕事量や残業が多い、大変な仕事を押し付けられる、重要な仕事はやらせてもらえないなど、過大な仕事量や長時間労働、職場環境の問題も仕事へのストレスになります。
仕事内容そのものは好きなのに、仕事の量や割り振りがきつくて、それを放置している会社自体への信頼感も薄れ、仕事へのモチベーションが低下してしまうケースも少なくないようです。
・仕事内容や待遇の問題
職種や仕事内容自体が、自分に合わないということもあります。やりたかったはずの仕事を実際始めてみたら合わないことが分かったり、部署異動などで希望とは異なる仕事をすることになったりすると、仕事に行きたくない気持ちに直結しがちです。
また、給与や賞与、休日の日数、福利厚生など待遇面での不満や、昇給や昇進の見込みが薄いなど先々への不安も、仕事へのやる気を失わせる要因となります。
・通勤がつらい
満員電車や渋滞、通勤時間が長いなど行き帰りのしんどさを思うと、仕事に行きたくない気持ちが高まることも珍しくありません。
保育園の送迎などで余計に通勤時間が長くなってしまう場合などは尚更、通勤の問題が仕事のネックになりがちです。
・休み明けで調子が出ない
ゴールデンウイークや年末年始など連休明けに仕事に行きたくない気持ちが高まるのも、よくあることです。普段の仕事には特にストレスがない場合でも、休みのサイクルに身体が慣れてしまうと、仕事に行かずこのまま休んでいたいと感じることは、多くの方が身に覚えのあることなのではないでしょうか。
仕事に行きたくないのは多くの人に起こり得ることで、特におかしなことではないのですが、時には病気が隠れていることもあります。
・抑うつ状態やうつ病
気持ちがふさぎ込む、意欲が湧かない、以前好きだったことにも興味が持てなくなるなどの精神的な変化や、吐き気・頭痛・寝付けないなどの身体的症状が続く場合は、抑うつ状態やうつ病の可能性があります。
仕事など明確なストレスがない場合もうつ病を発症することがあり、その症状として仕事に行きたくない気持ちが出てくるケースもあるので、今までとは違う心身の状態が見られたら、早期の対処が望ましいです。
・発達障害
人と適切な距離感を保つことや、優先順位を踏まえて計画的に仕事を進めることが苦手、文字を書くことや計算など特定の作業が苦手等の発達障害の特徴が、職場での居づらさや評価してもらえない思いなどにつながり、仕事への意欲を減退させることもあり得ます。
・不安障害
人前で話す、自分から話しかける、分からないことを質問する、上司との会食など、特定の社会的な状況で非常に強い緊張や不安を感じる場合は、社会不安障害が背景にあるかもしれません。職場以外でも同様の状況で不安や緊張を感じるようでしたら、何らかの不安障害のおそれがあります。
・PTSD
過去に強いストレスや傷つきを体験したのと似た状況が職場内で起きたとき、過去の心的外傷が噴出してしまうこともあり得ます。その場合は、PTSDの症状が出ている可能性もありますので、症状が強い、何度も繰り返すなどでお困りならば、心療内科の受診を検討すると良いでしょう。
・適応障害
職場との相性や、職場環境に問題があるとき、様々なストレス反応が心身や行動に出るのは自然なことです。他の病気の可能性がない場合は、職場への適応障害と診断されることもあります。
ここからは、仕事に行きたくないときの対処法について見ていきましょう。
・いったん行ってみる
朝なんとなくだるい、嫌な気持ちだけど絶対出勤できないほどではない、という場合は、とりあえず身支度をして家を出てしまうのも一手段です。身体が動けば、気持ちも軌道に乗って一日仕事ができるなら日々そのように乗り切って、自然に仕事に行きたくない気持ちが軽減していくのを待つのも良いですね。
・休暇をとる
心身の疲れがたまってきたら、早めに休むのも大切なことです。休暇をとって好きなことをする、何もせず家でゆっくり過ごすなど、心や体の疲れをとって英気を養うだけで、仕事へのモチベーションが回復することもあります。
・睡眠や生活リズムを整える
仕事が大変だと、プライベートの時間を充実させてバランスを取ろうとして、睡眠時間を削ったり暴飲暴食をしてしまったりする人も珍しくありません。その瞬間はストレスが軽くなったように感じても、睡眠不足や生活リズムの乱れは自律神経に影響し、かえってしんどくなってしまいます。
睡眠時間の確保、朝起きて朝日を浴びる、できるだけバランスの良い食事をとるなど、生活リズムを整えるのも基本的で大切な対処法です。
・同僚や上司などに相談する
仕事や職場に行きたくない理由があるならば、部署異動やリモートワークを増やせるか等、働き方や職場環境の改善について同僚や上司に相談するのも、具体的で効果的な手段です。
自分自身に要因があると思われる場合は、産業医や社内の相談室にいるカウンセラー、外部の医師やカウンセラーなどに相談して、仕事との付き合い方を調整していくのも大切な方法のひとつです。
・行きたくない理由や働く目的を考えてみる
なぜ仕事に行きたくないのか、その理由が分からないという方もいるかもしれません。そんなときは、少し時間をかけてじっくり考えてみると良いでしょう。
また、自分にとっての働く目的とは何かについても、考えてみて損はありません。やりがいや生きがいのため、趣味や家庭・子育てなどに必要なお金を得るため、自分の成長のため等々、自分が仕事に求めていることと現在の仕事とが合致していないことが、行きたくない理由になっていることもあり得ます。その場合は転職を検討するのも一手段ですね。
行きたくない理由や働く目的が明確になれば、適切な対処法も自ずと見えてくるのではないでしょうか。
仕事に行きたくないときに避けた方がよい行動には、以下のようなものが挙げられます。
・無断欠勤や遅刻
無断で仕事を休んだり連絡なしで遅刻したりすることは、社会人として避けたい行為です。連絡しづらい状況もあるでしょうけれど、一言お休みまたは遅刻する旨は伝えておくようにしましょう。
・衝動的な退職
大変な環境で働いていれば、仕事への嫌悪感が高まり、一時の感情で衝動的に「辞めます」と言いたくなることも時にはあるでしょう。しかし、それは職場にとっても自分自身にとっても得策とは言えません。
衝動的な気持ちはどうにかやり過ごして、改めて考えてみて、それでもやはり退職した方がいいと思えたら、今の仕事の引継ぎや次の仕事のことを考えて、最善のタイミングを見計らって辞められるといいですね。
・具体的な対処をしないまま耐え続ける
仕事に行きたくない気持ちや状況に対してひたすら耐え続けるのも、避けたい行動です。具体的な対処をしないと辛い状況が続き、どんどん行きたくない気持ちも大きくなってしまいがちです。我慢し続けるのは心にも身体にも負担の大きいことなので、早めの対処が望まれます。
明日の仕事を思うと憂うつになってしまうことは、きっと誰にでもあります。ただ、それが続くようならば、その理由に応じた対処法を探っていけるといいですよね。
仕事に行きたくないとき、つい自己否定的に考えてしまう方も多いようですが、今の自分がダメなのではなく、仕事内容や職場環境の方に改善点が見つかることもあります。あまり自分を責めすぎず、周囲の人とも相談しながらより良い対処を探っていきましょう。
<参考文献>
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r05-46-50_kekka-gaiyo02.pdf
令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)