生活費が底をついてしまったときのことを考えたことがありますか?「まさかお金がなくなるなんてことはないだろう」「なんとか働かないとどうしようもないでしょ」そんなふうに感じている方がほとんどだと思います。しかし、予想していなかった事故や病気によって働くこともままならないまま、お金がなくなってしまうことがあるのです。ここでは生活保障最後のセーフティネットである生活保護について解説していきます。
目次
- 生活保護の種類
- 最後に
うつ病に限らず、急な病気とお金の問題は切り離せません。最近はうつ病に対して保障される保険も増えてきました。お金の心配があると、病気であっても治療に専念するのが難しいことがあります。うつ病になるとどのようなお金の問題が出てくるのでしょうか?
①医療費
うつ病の治療費はもちろんですが、うつ病になる前から体の病気を持っていたり定期的に通院していたりすると、治療費がかさみます。お金がなくて歯科などの受診を後回しにしてしまう・・・という話をよく耳にします。
②治療が長引くことによって起こる無収入状態
主治医から休職して治療に専念することが必要と認められれば、休職して傷病手当金を受け取りながら生活することが多いです。それまでの月給に対しておよそ2/3の金額を手当金として受け取ることができます。期間は最長で1年6カ月であり、退職した場合も受給可能です。
うつ病の治療期間には個人差があり、傷病手当の期間中に回復して再び働きだすことができる方もいます。しかし、期間を過ぎても就労可能な状態にならないこともあります。また、就職活動時にうつ病になってしまった方や何らかの理由で働いていなかった場合は、傷病手当金を受給することはできません。うつ病は二次障害であることも多く、すべての方が傷病手当金を受け取れるような状況でないこともあるでしょう。
③年金の等級と未納問題
うつ病をはじめ、精神疾患が障害と認められれば障害年金を受給することができます。国民年金の方は障害基礎年金、厚生年金の方は障害厚生年金を受け取ることができ、厚生年金の場合は納付状況によって受け取ることができる金額が異なります。うつ病で障害年金を受ける場合、障害基礎年金2級、障害厚生年金3級となることが多いです。障害基礎年金2級は、月に65,141円、厚生年金は勤務年数に応じてプラスされて受け取ることができます。年金だけで生活していくことは難しく、それまでの貯金を崩しながら生活することになる可能性が高いです。
加えて、問題となりやすいのは年金の未納です。障害年金を受給するには、障害による初診日までに未納がないことが条件となります。退職から初診日までに年金の支払い免除手続きをしていなかったり、大学生時代に未納のまま過ごしていたりしたことで障害年金を受け取れないことがよく起きているのです。
臨床心理士とは・・・
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ここまで、うつ病の治療が長引くと経済的な課題が生まれやすいことを解説してきました。治療継続、生活の見通しが見えなくなりそうなとき、選択肢として考えられるのが生活保護制度です。
具体的にはどのような制度なのでしょうか?
生活保護とは、日本国憲法による「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度です。衣・食・住を確保し、将来的な自立を目指せるように構成されています。
生活保護は理由を問わず、個人の資産・貯金が「最低限度の生活」を保てる金額を下回ると申請することができるようになっています。申請窓口は市区町村の福祉事務所、または生活保護課です。資産状況や就労の可能性、扶養可能な親族がいるかの調査があります。
生活保護制度は、現金支給のほかに生活を支えるものの現物給付、控除を行い生活を守ります。生活保護による扶助は以下のように分類されています。
①生活扶助
主に食費・水光熱費・衣料費にあてることができる現金給付
②住宅扶助
住まいの家賃に相当する現金給付
③教育扶助
義務教育を受けるために必要な学用品を購入するための現金給付
④医療扶助
医療サービスを受ける際に、診療機関へ支払われる給付
⑤介護扶助
介護サービスを利用する際に、介護サービス業者へ直接支払われる給付
⑥出産扶助
出産にかかわる費用の実費を支給
⑦生業扶助
就労に必要な技能習得に係る費用。定められた範囲内で実費を支給
⑧葬祭扶助
葬祭にかかる費用の実費を支給
使い道や給付基準がありますが、家賃や生活費、医療費が一定の範囲で保障されるようになっています。
うららか相談室では、臨床心理士・社会福祉士などの専門家を選び、メッセージ・ビデオ・電話・対面形式のカウンセリングを受けることができます。
匿名で相談ができるため、家族や友人に知られることなく、安心して相談していただくことが可能です。
生活保護を受けられるかどうかの基準となるのは「生活するだけのお金が残っているかどうか」のみです。うつ病によって、働くことがかなわず、生活するお金がないとなれば申請・受給することができます。障害年金をもらっている場合やアルバイトなどで収入があれば、それらを申告して扶助額の調整を受ける必要があります。
生活保護を受けるいちばんのメリットは医療費の心配をしなくていいということです。うつ病をはじめ、精神障害には継続した治療が必要です。金銭的な理由で、通院回数を減らしたり必要な薬を飲まなかったりすれば病状はよくなりません。安定した医療保障を受けられることは生活保護最大のメリットとなります。
また、生活費も保障されるので、体調が整わない中で無理に働き、悪化してしまう悪循環を防ぐことができます。金銭的な安定を得ることで、治療に専念し、回復してから自立へ向けて動き出すというステップを踏むことができます。
デメリットとしては、生活保護を受ける前に資産となるものは手放さなければならない点です。お住いの地域によって、生活必需品は異なりますが、不動産や車など手放すことで生活費に充てることができる資産は生活保護申請前に手放さなければなりません。すべて手放してもなお、生活がままならないという場合にようやく生活保護を申請することができるようになります。ご家族と一緒にお住いの場合は、ご家族もすべて生活保護世帯となる必要があり、持ち家にお住いの場合は資産価値がとても低いという場合でないと住み続けることができません。ご実家や持ち家に住み続けながら、生活保護を受給することは困難でしょう。
生活保護は本当に手持ちのお金がなくなってしまったときに使える制度です。保護を受けている間は貯金をすることも資産を持つこともできません。できることなら、きちんと年金を納めていざというときに障害年金の申請をできるようにしておくことがベストかと思います。
とはいえ、本当に困窮したときには利用できることが保証されている制度でもあります。困ったらまず役所や福祉事務所に相談してみましょう。
参考サイト
生活保護制度 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html
日本年金機構ホームページ https://www.nenkin.go.jp/